Wed 080625 三崎 しったか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 080625 三崎 しったか

 降水確率80%の予想だったが、外を見るとまずまずの晴れ。仕事が休みだから、電車に乗って三崎と城ヶ島に行ってこようと思う。鎌倉でもいいが、アジサイがきれいに咲きそろった頃だから、おそらく鎌倉はひどく混雑している。私はアジサイを見に行くのではなくて、サザエやハマグリでちょっと酒が飲みたいだけなのである。アジサイにしても、1株2株ならとてもきれいだと思うけれども、6月も下旬になった鎌倉のアジサイの名所だと、色あせるほど成熟しきった大量のアジサイに囲まれて、何だかアジサイによってたかって食われそうな妙な気分になる。食われるより、食って飲む方がいいに決まっている。


 品川から京浜急行の快速特急に乗って、13時に三崎口に到着。横浜、横須賀と晴れていたのに、三浦海岸に着く頃から急に曇ってしまった。三崎口の駅から港までタクシー(帰りはちゃんとつつましく路線バスに乗ったが、行きはちょっと急いでいたのだ)、港からすぐ連絡船に5分だけ乗って、城ヶ島に渡った。


 城ヶ島は、閑散としている。船着き場にいたのは5~6人の釣り客(というより地元の人たち)と、夢のようによく日焼けした上半身裸のおじいちゃんと、これもまた夢のように巨大なカラス2羽だけである。閑散、というより、要するに誰もいない。船着き場近くの3~4軒の食堂から、ヒマすぎる店員さんがみんな顔を出して盛んに声をかけてくれるのだが、これほど誰もいないところで声をかけられると、恐縮というか、返って恥ずかしくてとても店に入れない。


 そのまま逃げるように見当もつけずに歩いていくと、やっとのことで中高年観光客の集団に遭遇。「おお、助かった」と実際につぶやきつつ、手近な飲食店に入った。入った店は「カネあ」。大工の使うサシガネの中に、ひらがなの「あ」の一文字で「カネあ」。優しそうな中年のおばさん従業員が声をかけてくれたので、つられるように入った。中は、座敷10席ほどとテーブル席10席ぐらいの、寂れかけた観光地の食堂の典型のような店である。座敷だと10分もしないうちに背中が痛くなるほど身体が固いから、私はいつもテーブル席にすわる。テーブル席を選ぶと店の人に「せっかく座敷があるのに」という顔で変人扱いされるのだが、こっちは身体が固いのだから、やむを得ないものはやむを得ない。


 他に客は2組。昼飯時がほぼ終わって、緊張感もすっかり緩んだ店内で、まずビール1本と冷酒1本。イカ丸焼き・焼きハマグリ・サザエつぼ焼き・釜揚げシラス。私にしては酒の量が少ないが、いろいろ焼き物を堪能しているうちに満腹してしまい、それ以上酒が入らなくなってしまった。いっさい手を加えずに焼いただけのサザエがなかなかワイルドで噛みごたえがあり、必死で咀嚼している間にアゴが疲れてしまったことも酒を抑えた原因かもしれない。

 

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 あとからイカ丸焼きをもう1皿と「しったか」を追加注文した。「しったか」は高さ1.5cm直径2cmほどの円錐形の貝。尻高だから「しったか」だというのだが、別に全然尻が高いわけではない。名前に偽りがあるせいで引け目を感じるのか、貝殻の中に内気そうにクルクル丸まって隠れている。その内気な生き物を、ヨウジで強引に引っぱりだして食べる。強引すぎると、途中でプツンと切れてしまう。丁寧に、用心に用心を重ねて引っぱりだして口に運んでも、身が小さいから全く充実感がない。むりやり人を欲求不満にして、酒をもっと注文させてやろう、というワナのようなヤツである。マルセイユやニースで何度も食べては何度も腹をこわした「コキヤージュ」の中にも、こういう欲求不満のもとのような貝がたくさん入っていた。写真が「しったか」。

 

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 せっかく城ヶ島まで来たのだから、海を見ていかなければ変人である。変人はイヤだから、ちょっと酔ってはいたけれども、鬼の洗濯板のような岩の先まで歩いて荒れている海を見て、ついでにカニと戯れた。前にここに来たときはちょうど台風が接近していて、波が真冬の日本海並みに激しかったが、今日は薄曇りで波も穏やか。霞んだ沖合いを貨物船が行き来して、左手の方には馬ノ背の洞門がぽっかりよく見えた。いつものように地元のネコを撫でて、午後4時のバスに乗って帰ることにした。

 

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 帰りの電車で熟睡するうちに、さっき食べた貝の名前を忘れてしまい、なかなか思い出せなくて欲求不満はますます募った。「しっとく」?「きったか」?「もったか」?「ぺったら」?「けったり」?「どったけ」?「めったら」?「げったり」?「とってけ」? 考えれば考えるほど、真実から離れていく。ついでに言わせてもらえば、京急線の電車の種類も分かりにくくて欲求不満のもとである。快速特急と特急と、いったいどちらが速いのか、路線図を見てもさっぱり分からない。しかも、三崎口で乗ったときには「特急」だったのに品川で降りたときには何故か「快特」に化けていた。「てってけ」だったか「ぽっこり」だったか、貝の名前も思い出さないが、こうやって電車がどんどん化けてしまうのも、それ以上に問題が大きいだろう。


 代々木上原の駅前に新しいペットショップが出来ていた。以前駅ビルのテナントだった店が、駅ビル改修にともなって新しい店舗にしたらしい。帰りがけにちょっと立ち寄って、ニャゴロワ&ナデシコに1個100円のネズミのオモチャ2個を購入した。「おや、つきのわさん、また他のネコをなでてきたんですか」と言って、まずナデシコがオモチャを無視。ニャゴロワはしばらくダマされて遊び狂っていたが、やがてハッと気がついてオモチャを無視。するとナデシコが「ダマされてはならないこと」を忘れ、オモチャにダマされて激しく駆け回る。2個200円で約1時間半、代わりばんこにダマされ続けてくれた。


 夜、義理の叔父が亡くなった知らせが入る。母方の叔母の夫で、秋田の造り酒屋の長男に生まれたが、慶応大の経済学部を出て、造り酒屋を継がずに弟に譲り、東京で会社勤めをした。10年ほど前から長い闘病生活をしていたが、今日亡くなった。3度しか会ったことはないが、育ちの良さとは何かが分かるような、心からやさしい人だったと思う。今日はそういう不幸があったから、イタリア旅行記はまた明日に延期したいと思う。週末は、通夜と葬儀である。


1E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE 1/2
2E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE 2/2
3E(Cd) Lucy van Dael:BACH/SONATAS FOR VIOLIN AND HARPSICHORD 1/2
4E(Cd) Lucy van Dael:BACH/SONATAS FOR VIOLIN AND HARPSICHORD 2/2
5E(Cd) Holliger:BACH/3 OBOENKONZERTE
6E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 1/4
6E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 2/4
9D(DvMv) MYSTERY, ALASKA
12D(DvMv) GIRL, INTERRUPTED
total m276 y276 d276