Mon 080616 イタリア国鉄自動販売機 窓口の列について | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 080616 イタリア国鉄自動販売機 窓口の列について

 午後から吉祥寺1号館で授業収録2本。「B組」の収録は順調に進んで、今日は夏期講習第3・4講が終了した。授業は絶好調で、夏期講習に入ってからは、好調を実感できた1学期よりもさらに調子が上がっている。この10年で最高の出来になりそうである。
 

 そういえば、まだ駿台・お茶の水本部校舎で授業をしていた頃は、いつだってこのぐらい好調で、いつだってこのぐらい授業が楽しくて、授業に出かけるときにも実にうきうきしていたし、授業がしたくてしたくてたまらなかった。まだ埼玉の東鷲宮に住んでいて、お茶の水まで2時間もかかったけれども、それでも長い電車の行き帰りをちっとも負担に感じないで生きていた。
 

 予備校の授業に少しだけ疲労を感じ始めたとすれば、代ゼミの8年間かもしれない。あの頃は、単科ゼミのテキストに大量の問題を掲載するクセがあって(というよりテキストの分量の多さを講師同士で競い合うような風潮があって)私も問題を大量に掲載しては、それを消化しきれずにいつも慌てていたし、いつでも焦っていた。休み時間は20分しかないのに、18分30秒延長して、生徒にも他の講師にも迷惑をかけた。正直言って、あんなに焦ったり慌てたりしていては、講師本人が楽しいわけがないのだ。まあ、何とか最高の授業になるように盛り上げてはいたし、満足してもらえてもいたが。
 

 今回の「B組2008年版」は、長文読解講座として決定版と言える最高のものに仕上がりつつある。講師が慌てたり焦ったりすることのないように、テキストの内容も分量も厳選に厳選を重ねた。収録中の夏期講習は、出来ることなら無料の招待講習に設定して、出来るだけ多くの受講生に体験受講してほしいほどの仕上がりになっていると確信する。
 

 このごろの飲み過ぎを反省し、今日は大人しく帰宅して参考書執筆を進めることにした。ただし、ニャゴロワもナデシコも、そういう真剣な私をちっとも信用していない。「ちょっとでも油断して甘やかすと酒を飲んで居眠りするから」と言いはなち、冷たく突き放すように、さっさと肉球を見せて「バイバイ、部屋で仕事しなさい」とのこと。酒の相手はしてくれそうにない。

 
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 5月11日、マントヴァからの帰りに、マントヴァ駅でレシートを見せてチケットのおつり約14ユーロを受け取る。どういうことかといえば、ミラノ中央駅でクレモナ行きのチケット6ユーロを購入したとき、20ユーロ札を入れた自動販売機からおつりが出てこず、代わりにレシートが出てきて、よく読めないイタリア語を夢中で判読したところ「どこの駅でもいいからこのリチェブータをFS駅員に提示すれば釣り銭を受け取ることが出来る」と記載されていたのだ。リチェブータとはレシート、FSとはイタリア国鉄である。
 

 ミラノ・チェントラーレ駅構内には、2~3年前なら信じがたいほどたくさんのチケット自動販売機が設置され、しかも驚いたことに、その自動販売機がほとんど壊されもせずに正常に機能しているのであるが、この「BIGLIETTO VELOCHE」つまり「スピードチケット」には、近郊線専用の簡易機と、遠距離チケットも買える本格的なものの2種類あるのだ。本格的なものはヨーロッパならどこでもおなじみの大きなチケットが出て、高額のユーロ札で払ってもキチンとおつりが(驚いたことに)間違いなく出てくる。
 

 一方、簡易機の方は、チケットの印刷も不鮮明だし、おつりも出てこない。20ユーロ札で6ユーロのチケットを買い、おつりは出てこず、ディスプレイには「取引完了」の文字が出て、もうそうなってしまってからは、叩いても殴っても蹴飛ばしても、もうピクリとも動かないしニヤニヤしてもくれない。全く反応なし。「頑としてはねつける」という言葉の見本のような「おお、これぞ公務員の鑑」、まさに冷酷無比の態度である。やられた、14ユーロ、おお、14ユーロ、ボクの私の2500円。お機械さまに、だまし取られた、むしりとられた、ボクは私は被害者だ。パリ地下鉄のジュース販売機でそういう光景を何度か見たことがある。地元ヨーロッパ人だって同じ反応をして、機械をぶったり蹴ったりするのだから、私がそのマネをしてもいいはずだ。ところがよくよく見るとチケットと一緒にさっきの「リチェブータ」があって、ほっとするという仕組みになっている。まずは、一安心である。ミラノに戻る電車が出るまで時間があったから、リチェブータを示して返金してもらうことにした。
 

 ただし「窓口に並ぶ」ということになれば、イタリアでは話はそんなに単純には済まない。窓口は3つあっても、係員がいるのは1つだけ。そしてその窓口には必ず1組か2組の先客がいるのだ。日本ならせいぜい待っても3分程度、「待つ」というほどのこともないだろう。しかしここはイタリア。1組の先客がいるだけで、待ち時間が10分以下で済むことはまず期待できない。
 

 窓口では、まず客が念入りに質問、係員が念入りに聞き返し、さまざまな選択肢を提示。客は客どうし相談を開始、どの選択肢がベターか熱心に討論、激論の結果明らかになった問題点を係員に説明。理解した係員はその疑問点1つ1つに念を入れて説明、相手がドイツ人やフランス人だと言葉がしっかり通じないからメモ用紙に要点を書きながら説明。しかしメモ用紙またはペンが見つからないので、奥で休憩中の同僚に紙とペンを要求。その間に客たちの間で新たな疑問点が浮上。もっとお得でもっと楽でもっと何とかなる選択肢はないのかをもう1度質問。その途中で携帯電話が鳴り、質問は中断し、やっと電話が終了すると、今度は係員の方の電話が鳴り、説明が中断。客は肩をすくめ、苦情を言い、仕方がないので休憩中だった別の係員が窓口に登場。彼は事情を全く知らないから、もう1度最初から客の事情説明、選択肢の提示、討論、激論、解決策の提示、メモ用紙、ペン、ケータイ。尽きるところを知らないのである。
 

 幸い、この日は中年の女性職員が「日本人が困っている」ことに素早く気づき、上手な英語で丁寧に応じてくれた。日本人というものが、ヨーロッパでどれほど評判がよく、どれほど大切にされているかを実感するのは、こういう瞬間である。日本人に限って、困ったまま放置されることはまずない。空港の入国検査でも、ホテルのチェックインでも、レストランでも土産物屋でも、「日本人が困っている」様子を見ればイタリア人でもフランス人でもきわめて積極的に声をかけ、助けてくれる。他の外国人とは扱われ方に大きな差があるのを実感する。私たちの先輩の日本人たちが営々と努力してきた賜物なのだと思う。

 

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 こうして、マントヴァの旅は終了。写真は歩いて通過しただけのロトンダとラッジョーネ宮。マントヴァから各駅停車で2時間半かけてミラノ・チェントラーレに帰ってきた。21時40分。日曜夜の電車は、週末を田舎で過ごしてミラノに戻る人々で混雑していた。


 長かった1日の締めくくりに、中央駅構内のスーパーに立ち寄って、買い物。ほぼ昨日と同じものを購入したが、さすがに喉の渇きを感じ、ビールは昨日より1本増やすことにした。

1E(Cd) CHET BAKER SINGS
2E(Cd) Art Pepper:SHOW TIME
3E(Cd) Maceo Parker:SOUTHERN EXPOSURE
4E(Cd) Harnoncourt:BACH/WEIHNACHTSORATORIUM 1/2
5E(Cd) Harnoncourt:BACH/WEIHNACHTSORATORIUM 2/2
6E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH vol.1
7E(Cd) Brendel:BACH/ITALIENISCHES KONZERT
10D(DvMv) ERIN BROCKOVICH
15G(α) 塩野七生:ローマ人の物語16 パックス・ロマーナ(下):新潮文庫
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