Sun 080608 徹夜の朝に 成田空港出発 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 080608 徹夜の朝に 成田空港出発

 昨夜は徹夜してしまった。徹夜とは言っても午前5時前にはベッドに入り、結局11時まで眠った訳だから、徹夜というよりも生活時間帯が4時間か5時間後ろにずれたというだけのことだが、充実感というか満足感というか、うーん私もまだ捨てたものではない、というような嬉しさがある。


 あと5~6年で講師として現役引退とか、何だかずいぶんジジ臭いことを言っているけれども、今日朝起きて、というより昼起きて鏡を見てみれば、そんなに老け込む必要は全くないのかもしれない。なるほど寝すぎて顔は腫れぼったいが、別に頭の毛もハゲちゃった訳ではないし、白髪だってアゴヒゲの中に2本目立つのが生えている程度だ。しかもその白ヒゲが他の真っ黒なヒゲよりもずっと力強くビンビンしていて、ほとんど金属的な光沢さえあるのだ。うーん。


 こういう、何となく嬉しくてはしゃいだ気分になっているときが実は一番危なっかしいのであって、気を引き締めてかからないと、一日怠けて無為に過ごしてしまう危険性がある。「秋葉原の路上で無差別切傷事件」の悲惨なニュースが伝わる中、とにかく気を引き締めて、午後から参考書執筆にかかる。「6月末までに上巻の原稿完成」「8月末までに下巻も原稿完成」が目標。これから講演会と授業収録が目白押しで多忙になるから、今のうちに1ページでも2ページでも稼いでおかないといけない。私の横ではニャゴロワがスーパーの袋に入って大欠伸だが、私はそういうことをしてはいられないのだ。(写真は3月6日のもの。こういう欠伸を最低1日5回ぐらい目撃する)

 

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 さて、ブログは1ヶ月前の記録に入る。5月10日、どんより曇って雨模様の代々木上原を出て、小田急の区間準急で新宿へ。新宿発8:03の成田エキスプレスに乗り、9時半ごろ成田空港到着。ソファで少し荷物を整理し直す。今回の旅行は、前回のニューヨークのときから使っているネイビーブルーのスーツケースを持っていく。ヨーロッパなのだからTSAロックは必要ないが、大きさの点でこのケースが一番と判断。中には、いつものように、カップ麺いろいろ、日本茶1箱(ティーパック30袋)、コーンスープ8袋、湯沸かしポットなど。今回の旅行で荷物が増えたのは、洗濯物で時間を無駄使いしたくなかったので、10日分の着替えをすべて準備したからである。あと、革靴とちょっとおしゃれなシャツとネクタイ。ヴィラ・デステなど、ドレスコード付きの夕食が何度かあるはずだから、珍しくこういうものも持っていくことにした。10時、アリタリアにチェックインして、現金10万円をユーロに両替。


 空港内の蕎麦屋「そじ坊」でソバを食べ、酒を飲む。このところ海外に行く直前には必ずこの蕎麦屋で一杯飲んでいくのだが、別に特段旨いとか雰囲気がいいからとかいうのではない。いかにも安っぽい、いかにも下らない、おそらくこの世で一番取り柄も特徴もない、そういう平凡な蕎麦屋だからこそいいのである。ソバもうどんも定食類も、残さず食べるのがそれなりにつらい感じ。酒にしても、いつもなら冷たく冷やした小瓶の冷酒が出てくるのだが、今日はあいにく切らしていたのか、それとも店の方針で朝から酒を飲むような客には冷たく対応することになったのか、松戸か浦和か春日部の飲み屋で出てくるような、いかにもだらしない泥酔客向けの大きな白い徳利に、常温というより、ただ単になまぬるいだけの日本酒が2合近く入って出てきた。一言で言えば、まあ、まずいのだ。しかし私としては、優しくちやほやされるよりも、こういう扱いをされる方がむしろありがたいのであって、ぬるくてまずい日本酒をゆるゆるちびちび口に運んで、おお、この感じこの感じ、このチープな感じ、イタリアでもぜひチープに楽しくやってこようと、あくまでゆるくゆるく、気分をイタリアにシフトしていく。


 出国検査を通過して、ユナイテッドのラウンジに入る。何しろ私は、アリタリア航空「フレッチャ・アラータ・プラス」のメンバーである。いつもいつもエコノミークラスでの往復とはいえ、搭乗回数を稼いでいるから、いつのまにかVIP気分で各社のラウンジでデカい顔をすることのできる身分になっている。デカイ顔をするには、こういうラウンジでは、ぬるい日本酒なんかで満足していてはならない。まず氷水でキリッと冷やした日本酒をグラスで2杯、同じくワインクーラーでキリッと冷やした白ワインもグラス2杯。銘柄なんかにこだわっているようではまだシロートなのであって、航空会社のラウンジでは酒の銘柄よりも、恥ずかしがらずにデカイ顔をするかどうかがすべてなのである。ついでに、海外で孤立してしまったときに備えて、クッキー・おつまみ類・箱入りフレークなども、手に入る限り機内持ち込みのリュックに入れていく。おお、オヤジ。おお、自分はすっかりオヤジである、その実感こそが、出発前の最大の幸福。オヤジになりきって、酔っぱらって、たくさん詰め込んで、ラウンジの女性職員にニヤッと笑われて、こうでなくては旅行の楽しみは半減する。


 13時、アリタリア・ミラノ行に搭乗。エコノミークラスの後方座席をネットで予約しておいた。1週間前に予約したときは、後方座席はガラガラだったのだが、そのガラガラのところに、ツアーで出かけるらしいオジサマ団体&オバサマ団体が一気に入って、機内はまあそれなりに混雑している。ただ、アリタリアの経営危機が伝えられるせいか、それとも大型連休直後のせいか、いつものミラノ便にしては席の隙間が多い。いつもならパンパンに腫れ上がり、熱でもあるんですかと尋ねたくなるほどにハアハアいいながら熱々で離陸するアリタリアなのに、今日は3人掛の席がそれぞれ1席ずつ空いている。エコノミーなのに、爽やかな涼風が吹き抜ける。午前中に飲んだ合計約1リットルの酒もうまく回ってきてくれて、たいへん快適で、たいへん眠たくて、しかし少しだけ寂しい。パンパンに腫れ上がっていないミラノ便は、ミラノ便らしくないのだ。


 という訳で、アリタリアのエコノミーとしては初めて旨いと思った食事も済んで、また赤ワイン1杯を空けて、いつもなら赤ワインは小瓶でいくらでもくれるのに、今日はプラスティックのグラスに半分しかくれないし、もっと飲むかとも聞いてくれないし、もう1杯くださいと客が言い出すスキをアテンダント全員が決して見せないし、おそらくそれは経営危機のせいなのだろう、と考えながら、今までの海外旅行で一番気持ちよく深い眠りについた。

1E(Cd) Backhaus(p) & Vienna:BRAHMS/PIANO CONCERTO No.2
2E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM 1/2
3E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM 2/2
6D(DvMv) TROY
9D(DvMv) COYOTE UGLY
12F(Rr) 世界美術大全集17 バロック2:小学館
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