新しい年がはじまり1か月が過ぎようとしています。
クリニックは気持ちも新たに診療を開始しております。
恒例ですが、今年も2025年の体外受精治療成績について発表させていただきます。
□採卵・胚移植件数について
採卵件数は増加、移植件数は微減という結果になりました※。(図1)
2022年4月より体外受精保険適応開始となり、2025年4月で3年目となるため全国的に体外受精全体の件数が落ち着いてくる時期かと考えていますが、今後日本産科婦人科学会からの全国データを確認していきたいと思います。
※今回の集計より採卵・移植件数のカウント方法を変更しましたので、一部2024年発表データと数値が異なります。
□妊娠率・流産率について
図2および表1が胚移植あたりの臨床的妊娠率・流産率のデータになります。
図3が妊娠率の2024年との比較ですが、各年代で妊娠率が上昇しており、特に35才以下での上昇率が高い傾向でした。
今回は全体的に成績の向上を認めましたが、今年以降もこの傾向が継続していくよう、現在の方針の見直しならびにこの後述べさせていただくような新しい技術の導入を進めていきたいと考えています。
□培養成績の評価について
ICSI正常受精率を図4に、胚盤胞・良好胚盤胞発生率を図5に示しました。
表2にESHREの提唱するKPI値と当院の培養成績を提示しました。
受精率や胚盤胞発生率といった培養成績をの評価方法として、ESHRE(ヨーロッパ生殖医療医学会)が発表しているKPI(Key Performance Indicators)というデータがあります。KPI値とは体外受精において、培養室の質・安全性・再現性を客観的に評価するための指標群で、最低限達成すべき数値=「達成値」理想の培養成績=「目標値」に分かれています。1)
達成値以下であった場合は、培養環境や手技、使用機器などの見直しが必要であると考えられ、目標値を超えて維持できているのであれば、その培養室は十分なパフォーマンスを出していると言っていい値とされます。1)
ESHREのKPI値は40歳未満を母集団の対象としており、当院のデータは40歳以上の症例も含まれますので、単純に比較は出来ませんが、当院の結果とKPI値との比較では、すべてのデータにおいて達成値はクリアしています。細かく分析すると胚盤胞発生率、良好胚盤胞発生率は目標値も達成していますが、受精率と着床率は達成値と目標値の間という結果でした。
今後ICSIの技術に対する振り返りや、着床率を高められるよう着床不全に対する精査を積極的に進めていきたいと考えています。
□着床前診断について
移植当たりの妊娠率の上昇や流産率の低下が期待できる技術として着床前遺伝学的検査(着床前診断)があります。例えばPGTのひとつであるPGT-Aは体外受精で得られた受精卵(胚)を子宮に戻す前に胚染色体の数的異常についての検査をおこなう技術です。
2017年1月〜2018年6月にPGS(現PGT-A)を対象とするパイロット試験が実施されました。この試験では反復移植不成功例(92例)と反復流産例(79例)を対象に、PGT-A群と非PGT-A群に分けて治療成績を比較したところ、何れもPGT-A群で臨床的妊娠率の上昇および流産率の低下を認めています。(反復不成功;70.8 % vs 31.7%、11.8% vs 0%、反復流産;66.7 % vs 29.7%、14.3% vs 20.0%) 2)
このようにPGTは胚移植あたりの妊娠率を上昇させ、流産率が低下させる可能性があり、従って妊娠までの時間を短縮が期待できる有効な技術になります。
当院も2026年4月よりPGT-AおよびPGT-SRを開始する予定で、今後この技術が必要な患者様に提供させていただき、妊娠率も向上や流産率の低下を目指していきたいと思います。
☆彡まとめ☆彡
・当院の2025年体外受精データをまとめた
・採卵件数は増加、移植件数は微減した
・各年代で妊娠率の上昇をみとめた
・培養成績はESHREのKPI達成値をクリアしていた
・2026年4月よりPGT-A/PGT-SRを開始し、妊娠率も向上や流産率の低下を目指す
文献)
1)長瀬祐樹 いま目指すべき培養成績 - ARTラボにおけるKPI - Journal of Clinical Embryologist 26: 99-99, 2024.
2)Takeshi Sato et al.Preimplantation genetic testing for aneuploidy:a comparison of live birthrates in patients with recurrent pregnancy loss due to embryonic aneuploidy or recurrent implantation failure.HumanReproduction, Vol.34, No.12, pp. 2340–2349, 2019






