今年も大変暑い日が続いており外出するのも一苦労(?)ですが、みなさまお変わりありませんでしょうか。

 

 

診療する上では学会が発表する「ガイドライン」という治療指針に沿って進めていくのが基本ですが、今回日本泌尿器科学会が「2024年版 男性不妊症診療ガイドライン」(日本生殖医学会後援)というガイドラインを発表しました1)。

 

今回このガイドラインの一部を紹介させていただきます。

 

 

紹介する内容は男性不妊症の患者様に抗酸化剤(サプリ)の投与が推奨されるかどうかの内容です。

 

実際の記述は

「CQ6 特発性の男性不妊症患者において抗酸化剤投与は推奨されるか?」

 

というタイトルで、その推奨度は

 

「推奨グレードC、エビデンスレベルⅡ」となっています。

 

ガイドラインでは、推奨の程度でA~C、エビデンスレベル(根拠の程度)でⅠ~Ⅲ段階に分かれて評価が書かれています。(AやⅠが推奨度が高い)

今回は、推奨グレードC=(実施されることが)考慮されるエビデンスレベルⅡ=症例対照研究成績あるいは繰り返して観察される事象、という記載になっていますが、これを要約すると多少意見は分かれるものの一定の効果が期待できるという評価になります。

 

 

具体的な論文がいくつか紹介されていて

 

<効果があるとする報告>
90件のランダム化試験、10,303例の男性不妊症を対象としたCochranデータベースの解析では抗酸化サプリはプラセボに比べて出生率、臨床的妊娠率を改善させる可能性がある2)としています。

詳細な分析では

 

・精子運動率の改善

(単剤で効果があった薬剤)L-カルニチンセレニウム(セレン)ビタミンE

(組み合わせで効果があった薬剤)亜鉛+ビタミンE、亜鉛+ビタミンC+ビタミンE、コエンザイムQ10+L-カルニチン

 

・精子濃度の改善

(単剤)カロテノイド、オメガ3、ビタミンE、亜鉛

 

緑字は当院取り扱いサプリに含まれる成分

 

 

妊娠率・出生率の上昇

抗酸化剤使用群とプラセボ群で、軽度の男性不妊症患者に対しては、妊娠率がオッズ比1.89倍、出生率1.43倍と使用群で高く、体外受精においても妊娠率1.73倍、出生率1.63倍と抗酸化剤の効果を認めた。

 

 

 

 

グレードⅠの精索静脈瘤をもつ男性患者20名に対してŁ-カルニチン1500 mg,ビタミンC :60 mg , コエンザイムQ10:20 mg, ビタミンE:10 mg ,ビタミンB9: 200 μg , ビタミンB12:1 μg ,亜鉛 10 mg, セレニウム50 μg の連日投与を3ヶ月おこなったところ、精子DNA断片が22.1%低下し、高度に劣化した精子細胞が31.3%減少し、総精子数が増加した3)。

 

当院取り扱いサプリ(メネビット®)での内服1日あたりの含有量は:亜鉛12mg,ビタミンE:30mg,葉酸400ug,ビタミンB6:1.3mg,ビタミンB12:2.4ug,ビタミンC:180mg,セレン60ug,L-カルニチン:50mg,リコピン6mg、ですのでおおよそ上記の文献と同様の成分が含まれています

 

 

 

 

<効果がないという報告>

精液所見不良男性(精子濃度≦1500万/ml、運動率≦40%、正常形態率≦4%または精子DNA断片化率≧25%)で、パートナーが40歳以下かつ卵管が通過している174症例を象に、ビタミンC(500 mg/日), ビタミンE(400 mg), セレニウム(0.20 mg ),L-カルニチン( 1,000 mg ),亜鉛( 20 mg),葉酸( 1,000 μg ), リコピン(10 mg)内服群とプラセボ群に分け3~6か月後の妊娠率や精液所見を比較したが、内服の有効性は認めなかった4)。


 

 

このように抗酸化剤サプリに関しての効果はいくつか意見がありますが、最も多い症例数(10,303例)でのランダム化試験で効果ありと報告されているので、サプリを使用する意味はあると自分は考えています。

 

また単剤より複数の成分が含まれている方が効果がえられているのと、効果が出るには3か月間は必要であるので、これらの点にも注意が必要です。

 

 

 

☆彡まとめ☆彡

 

・男性用サプリ(抗酸化剤)について男性不妊症診療ガイドラインで報告があった

 

・サプリについて諸説あるが効果がある可能性が高い

 

・サプリは複数の成分が含まれている製品がおすすめ

 

・効果が出るには3か月は必要

 

 

当院でも必要な患者様に男性用サプリ(メネビット®、SOサポートⅢ®)をお勧めして、妊娠率の向上につとめています

 

 

文献)

1)男性不妊症診療ガイドライン 2024年版 日本泌尿器科学会編 日本生殖医学会後援 

2)de Ligny W et.al Antioxidants for male subfertility.
Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 4;5(5):CD007411. 

3)Gual-Frau J.etal. Oral antioxidant treatment partly improves integrity of human sperm DNA in infertile grade I varicocele patientsHum Fertil (Camb). 2015 Sep;18(3):225-9. doi: 10.3109/14647273.2015.1050462. Epub 2015 Jun 19.

4) Steiner AZet al.The effect of antioxidants on male factor infertility: the Males, Antioxidants, and Infertility (MOXI) randomized clinical trial.
Fertil Steril. 2020 Mar;113(3):552-560.e3. doi: 10.1016