
撮影でしばらく滞在していた、ヴェネチアから程近い小さな街。
ホテルから街の中心へ歩く途中、装飾壁のキリストに眼がいった。
いや、出逢った様に感じた。
それからは妙に気になり、通る度に見上げてしまう。
一日に何度も、様々な時間帯に通る道だった。
その都度、光の違いでゴールドの映りが変わる。
黄色がかり、赤味を帯び、青味がかり・・・
雰囲気はもちろん、表情までもが何となく異なってくる。
数週間の滞在中、それを感じ取るのが習慣だった。
教徒では無いが、自然な感じで親しみが沸いていた。
撮影も終了し、旅立つ日がやって来る。
何だか、そのキリストに別れが言いたくなり、
朝、早起きをして出かけて行った。
