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「魔王の影」 左子真由美
暗い森をおおう
大きな 影
あれは魔王
魔王の影
白いフクロウをお伴に
旅人を襲う
愛を憎む王は
愛し合うものたちを
引き離す
闇のなかを歩むわたしに
襲いかかる大きな影
黄泉の国へと
わたしを突き落とす
おそろしい魔王の影
国境
尾崎まこと
私の腕が半島であるならば
あなたは静かな内海である
懐かしい硬質の輪郭だけを
薄暗闇に残して
(それがことばというものだ)
豊穣な海の重量が消えていく
瞬間がある
魂は夢の彼方へ
淡い虹色の
国境を越えたのだろうか
泣き声でイザナキのように
あなたを呼びもどしたりはしない
僕は信じている ほんとうは
あなたが僕の後ろについてきていると
そして
オルフェのように
ふり返ったりしない
生きていても
死んでいても
国境で会おうと
これは出会いの日の
変わらぬ約束だから
越えようとするだけだ
オルフェウスの垂直の国境を
青い花 左子真由美
どこかに
はるかな荒野に
咲くという
まだ誰も見たことのない
青い花
月のしずくをあびて
一夜だけ
野に咲くという
青い花をさがして
旅だったひと
いまはどこに?
どこかに
はるかな荒野に
咲くという
まぼろしの青い花
それはどこに?
迷える羊 左子真由美
わたしはストレイ・シープ
迷える羊
群れから離れて
野をさまよう
菩提樹のそばで憩い
せせらぎの水を飲み
星空の下で眠る
わたしはストレイ・シープ
迷える羊
きっとどこかで待っている
探し求めるひとは
どんなに遠くとも
いつかたどり着こう
わたしはストレイ・シープ
迷える羊
群れから離れて
野をさすらう
