私の中のあなた


2009年 アメリカ映画

監督 ニック・カサヴェテス

脚本 ジェレミー・レヴェン

原作 ジョディ・ピコー

出演 キャメロン・ディアス



白血病の姉のドナーとして生まれた妹が、自身の体の自由を求めて両親を提訴するヒューマンドラマ



⚫︎あらすじ


11歳の少女アナは、急性骨髄性白血病を患う姉ケイトに臓器や血液を移植するために、遺伝子操作によってこの世に生を受けました。


生まれてからずっと、アナはケイトの治療のために過酷な医療行為を受け続け、幼いながらも姉の命を支える盾として生きてきました。


しかし、ケイトの腎不全が悪化し、アナに腎臓の提供が求められたとき、アナはそれを拒絶します。


彼女は敏腕弁護士のキャンベルを雇い、「自分の体のことは自分で決めたい」と、両親を相手に「医療行為の差止訴訟」を起こすのです。


元弁護士の母サラは、愛するケイトの命を救うためだけに必死で、アナの行動が理解できず激しく対立します。


家族が裁判でバラバラになりかける中、実はこの訴訟には、病気に苦しみ自身の死を受け入れたケイトの「これ以上アナを傷つけたくない、自分をこのまま逝かせてほしい」という切ない願いが隠されていました。


裁判を通じて家族はそれぞれの本心と向き合い、最終的にケイトの意志を受け入れます。


ケイトは家族に看取られながら静かに息を引き取り、残された家族は彼女の愛を胸に、それぞれの未来へと歩み始めます。




⚫︎感想


白血病の姉を助けるためドナーとして生まれてきた妹の話しでした。


姉のために小さなころからドナーとしての役目を果たしてきた妹が11歳になったころ「もう嫌だ!」と親を相手に裁判で訴えるんです。


でも本当は死を受け入れた姉からの頼みだったのです…。


お父さんは消防士、お母さんは弁護士、長男、白血病の長女、ドナーとして生まれた妹、そしていつも家族に寄り添っているお母さんの妹、という経済的に幸せな家庭に、降りかかった子どもの病気。


お母さんは弁護士を辞めて、長女のために懸命にあらゆる手を打ち、ドナーとして全てが合う人間を創ります。


そんなことが医学的には出来るようですが、倫理的にはどうなのでしょう⁈


ドナーとして生まれてきた妹の目線ですすむ物語なんですが、なかなか考えさせられる映画でした。



⚫︎救世主兄弟は実在する


 結論から言うと、映画のように「ドナー目的で条件の合う子供を選んで生むこと」は技術的に可能であり、世界中で実際に多くの事例があります。

 このような目的で生まれた子供は、医療の世界で「救世主兄弟(サバイバー・シブリング)」と呼ばれています。


 体外受精によって複数の受精卵(胚)を作ります。

 その受精卵の遺伝子や白血球の型(HLA)を検査します。

 病気の子供と型が一致し、かつその子自身も遺伝病を持っていない最適な受精卵だけを選んで母親の子宮に戻します。

 これによって、生まれた瞬間に上の子の100%確実なドナー(臍帯血や骨髄など)になれる赤ちゃんが誕生します。

 世界初の事例は2000年にアメリカで誕生したアダム・ナッシュくんで、ファンコーニ貧血という難病の姉を救うために生まれました。



⚫︎倫理的に問題はないの?


 この技術は、苦しむ子供を救う大きな光である一方、映画で描かれたような重い倫理的課題を抱えています。

 アメリカでは、国家による一律の法規制はなく、民間の医療機関や倫理委員会の判断に委ねられています。

 イギリスやフランスでは、重い遺伝病や血液病の治療に限定し、政府の厳しい審査機関の許可を得た場合のみ合法としています。

 日本では、法律による明確な禁止や許可の規定はまだ未整備ですが、「HLA型(ドナーの型)の一致のみを目的とした着床前診断」は原則として認められていません。

 現実の「救世主兄弟」の多くは、体に負担の少ない「臍帯血(へその緒の血液)」を提供することで上の子を救っています。 映画のように成長してから何度も痛い思いをして骨髄や臓器を奪われるようなケースは、医療倫理の観点から現実には極めて稀です。



⚫︎へその緒の血液を輸血する


 へその緒と胎盤の中に流れている血液「臍帯血(さいたいけつ)」を採取して、病気の治療に利用します。

 これは赤ちゃんが生まれた瞬間、一度きりしか採れない非常に貴重な血液です。

 この臍帯血には、「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」という、血液(赤血球、白血球、血小板)を作り出す大元になる細胞が驚くほど豊富に含まれているからです。

 白血病などの難病は、この血液を作る工場自体が正常に働かなくなる病気です。そのため、健康な造血幹細胞を移植して、患者の体内で新しく正常な血液を作らせる必要があります。

 へその緒の血液を利用する技術のおかげで、現代の医療では「誰かを傷つけて、誰かを救う」という映画のようなジレンマを大幅に減らすことができるようになっています。


へその緒の血液ってすごいんですね!


ただ臍帯血を安全に移植に使うためには、無菌状態で素早く採取し、徹底的な検査を行った上で、マイナス196度の液体窒素で何年も凍結保存し続けなければなりません。これには膨大な費用と人手がかかるそうです。



救世主兄弟という存在が、実在することを知った映画でした。