俺たちに明日はない
1967年 アメリカ映画
監督 アーサー・ペン
脚本 デイヴィッド・ニューマン
出演 ウォーレン・ベイティ
フェイ・ダナウェイ
1930年代の大恐慌時代のアメリカに実在した、ボニーとクライドという若い犯罪者カップルの破滅的な半生を描いた作品
⚫︎あらすじ
舞台は1931年、不況に喘ぐテキサス州。退屈な毎日に不満を抱いていたウェイトレスのボニーは、刑務所から出所したばかりの青年クライドと運命的な出会いをする
クライドの刺激的な生き方に魅了されたボニーは、彼とともに逃亡の旅へ出ることを決意する
二人は行く先々で自動車を盗み、銀行強盗を繰り返していく
車に詳しいC・W・モスや、クライドの兄夫婦も仲間に加わり、「バロウ・ギャング」としてその名を轟かせていった
彼らは、不況の原因である銀行から金を奪う義賊として、次第に大衆から英雄視される存在になっていく
しかし、犯行がエスカレートするにつれて警察の追跡は激しさを増し、銃撃戦の中で兄は命を落とし、グループは徐々に追い詰められていった
一時的にモスの父親の農場へ身を隠した二人だったが、父親は息子モスの減刑と引き換えに、警察へ二人の居場所を密告する
そうとは知らないボニーとクライドは、道端に潜んでいた警官隊から一斉射撃を浴びてしまう
言葉を交わす間もなく、無数の銃弾によって蜂の巣にされた二人は、若く破滅的な愛の逃避行に幕を閉じる
⚫︎感想
アメリカンニューシネマの名作…と言われている「俺たちに明日はない」。題名だけは知っていたけど、見たことはありませんでした。
ムショ帰りの、ちょっとイケメン・ボニーと、ブロンド美女・クライドが銀行強盗を繰り返す映画です。
この映画の何がすごいか⁈
それは、この映画からアメリカでエロや暴力が映像化されたからなんです。
それまでアメリカ映画ではエロや暴力はタブーでした。
でも「俺たちに明日はない」は、セックスシーンや銃撃が描かれたアメリカ初の映画だから“アメリカンニューシネマ”なんだって。
内容的には1931年、アメリカ最悪の不況時代に本当にあった強盗事件を描いたそうです。
⚫︎映画「華麗なるギャツビー」の1922年のニューヨークは空前の好景気だったのに、その10年後はどうして不況だったの⁈
1920年代のアメリカはT型フォードや冷蔵庫など、大量生産大量消費のバブルでした。ですが1929年になると大量生産した物が売れ残り、それに気付いた賢い投資家が一斉に株を売ったため株価は大暴落(世界恐慌)しました。そして貸したお金が回収できなくなった銀行は次々と潰れ、人々の貯金が紙切れになりました。
大恐慌によって多くの市民が家や土地を失いましたが、その原因はローンを回収しにくる銀行でした。そのため、大衆は「俺たちの金を奪った銀行から、金を奪い返す強盗」を、悪党ではなく「義賊(ヒーロー)」として応援する奇妙な空気が生まれていました。
⚫︎ ボニーとクライドは実在する?
クライドは貧しい農家の生まれで、若い頃から泥棒を繰り返していました。ボニーは詩を書くのが好きなウェイトレスでしたが、クライドと恋に落ちたことで犯罪の道へ足を踏み入れました。
二人が逃走中にふざけ合って撮った多くの写真が警察に押収され、それが新聞に掲載されたことで、二人は当時の「時の人(セレブリティ)」になりました。
ルイジアナ州の道路で待ち伏せしていた警官隊から100発もの銃弾を浴びせられ、車に乗ったまま即死しました。この蜂の巣にされたフォードの車や彼らの遺品は、現在もアメリカの博物館などで展示されています。
⚫︎警察も、あれほど乱射しなくてもいいと感じますが!?︎
ボニーとクライドの車には、常に軍用マシンガンや大量の弾薬が積まれていました。過去の銃撃戦でも、警察は彼らの凄まじい反撃に遭い、何人も返り討ちにされていました。
警察側は「少しでも躊躇すれば、自分たちが蜂の巣にされる」と本気で恐怖していたため、弾が切れるまで撃ち続けるという過剰な行動に出たようです。
銀行強盗が多い当時は、V8のT型フォードが登場し、強盗団は素早く別の州に逃げていきました。彼らに乱射したのは地元警察でしたが、このころに州をまたいで取り締まるFBIが誕生したそうです。ですが政府機関のFBIと、地元に根付く警察との対立は今でも敵意があるそうです。
⚫︎アメリカンニューシネマとは?
1960年代にテレビが普及し、映画館に行く人が激減しました。莫大な予算をかけた伝統的なミュージカル映画や歴史大作「クレオパトラ」などが予算オーバーで映画会社は破産寸前になります。そのために若い世代の映画関係者に低予算で作れる映画を作らせました。そんな時に登場したボニーとクライドのようなアンチヒーローが、体制に逆らい、無残に死んでいく若者のリアルな姿を描いて爆発的なヒットを記録します。金がないため巨大なセットは組めず、外に飛び出して本物の街や道でロケ撮影したことが、結果的に映画にドキュメンタリーのような生々しいリアルさを与えることになりました。
また、当時ベトナム戦争により、若者たちが明日をも知れぬ不安に怯えていました。それは国家への不信感、人種差別に対する公民権運動、ヒッピー文化などの「カウンターカルチャー(反体制文化)」の爆発へと向かいます。
そのため、それまでハリウッドが作ってきた「正義は勝つ」「最後はハッピーエンド」という勧善懲悪な映画は、当時の若者から見れば「ただの嘘(現実逃避)」にしか映らなくなってしまいました。
⚫︎アメリカンニューシネマ代表作
1967「俺たちに明日はない」
1967「卒業」
1969「真夜中のカーボーイ」
1969「イージーライダー」
1969「明日に向かって撃て」
1970「真夜中のパーティ」
1971「フレンチ・コネクション」
1975「カッコーの巣の上で」
1976「タクシードライバー」



