火垂るの墓
1988年 日本アニメ映画
監督 高畑勲(たかはたいさお)
脚本 高畑勲
原作 野坂昭如(のさかあきゆき)
⚫︎あらすじ
14歳の兄・清太と4歳の妹・節子が、神戸大空襲で母親を亡くしてしまう
父は海軍に出征中で連絡が取れず、頼る人もない二人は親戚の家に身を寄せる
しかし次第に疎(うと)まれるようになり、兄妹は自らの判断で防空壕を改造した横穴に移り住む
最初は自由な暮らしを楽しむ二人だったが、しだいに食糧難と病気が二人を追い詰めていく
清太は妹のために必死に食べ物を探し回るが、やがて節子は栄養失調と衰弱で命を落としてしまう
そして清太も、孤独と飢えの中で静かに命を落とす
⚫︎感想
泣きます………
健気な節子、そして懸命に妹を守ろうとする清太
空襲以外は、実際の戦闘シーンこそありませんが、戦争によって荒廃していく人の心が描かれていました
食糧難になり、食べ物が無くなると人の心の中に自己防衛本能からくる鬼が出てきてしまうんですね…
親戚の叔母さんは清太と節子に食べ物を満足に与えてはいませんでした
“お国のために働く人”には、なるべくちゃんとした白飯を出すようにして、家に居るだけの清太と節子には具の少ない雑炊だけでした
でも、その叔母さんも雑炊を食べていたので、清太と節子も、もう少しだけ我慢をしていればなぁ…とも思ってしまいました
“人は14歳のときの歌を忘れない”と聞いたことがあります
それだけ繊細な年ごろなんでしょうね
そんな清太の思いがホタルになって蘇る悲しい作品でした
⚫︎原作者・野坂昭如(のさかあきゆき)
1930年(昭和5年)10月10日生まれの野坂さん自身の思い出を描いた小説だそうです。
終戦が1945年8月15日ですから、ちょうど野坂さんが14歳で、主人公の少年と同い年になります。
実際には、戦争批判の小説というより、自分自身が腹を空かせた少年だったために、幼い妹に食べ物を多く分け与える心の余裕が無かったそうです。
のちに自分に娘が生まれると、妹に対する謝罪の気持ちが膨らんで「火垂るの墓」を書いたそうです。
昭和一桁生まれの人たちは太平洋戦争の辛い思い出を持つ人たちなんですね…
