昼下がりの情事
1957年 アメリカ映画
監督 ビリー・ワイルダー
脚本 ビリー・ワイルダー
出演 ゲイリー・クーパー
オードリー・ヘプバーン
モーリス・シュヴァリエ
⚫︎あらすじ
パリの探偵の娘アリアーヌ(オードリー・ヘプバーン)は音楽院に通う純粋な少女です。
ある日、父が調査している浮気事件で、アメリカ人の大富豪フラナガン(ゲイリー・クーパー)が殺されそうだということを耳にします。
心配したアリアーヌは、父に内緒でフラナガンのもとを訪れ、機転を利かせて彼を救い二人は親しくなります。
フラナガンは世界を飛び回るプレイボーイで、女性との一夜限りの関係を重ねてきた男。
一方のアリアーヌは彼に惹かれながらも、自分を大人の女性に見せようと虚勢を張り、自分も多くの恋愛経験があるふうにふるまいます。
しかし、実際はフラナガンが初恋の相手で、恋愛経験もない純情な少女でした。
フラナガンは最初こそ彼女を他の女性と同じように軽く扱おうとしますが、次第にアリアーヌの純粋さと聡明さに心を動かされていきます。
やがて、探偵であるアリアーヌの父がフラナガンの過去を調べていくうちに、娘が本気で彼を愛していることに気づきます。
父はフラナガンに対し、彼女の心をもてあそばないよう忠告します。
フラナガンも自分が本気で彼女を愛していることに気づき、最後には二人で列車に乗ってパリを離れる決意をします。
⚫︎感想
『昼下がりの情事』…なんとなく淫靡なイメージが有りましたが、今回初めてちゃんと見て、ホントにおすすめしたい、イチ推しの映画です!
というのも昔の日活ロマンポルノに「団地妻 昼下がりの情事」という映画があって、そんなイメージがあったのかも知れません。
メチャクチャ金持ちでモテまくる男ゲイリー・クーパーに、初恋をする無垢な娘オードリー・ヘプバーン。
とにかく次から次へと女を変える男に恋をした娘は、自分だって同じように男が多数いると嘘をつくんです。
それを聞いた男は、初めてヤキモチを焼いて探偵に娘を調べさせますが、探偵は「彼女は全く清純だ!なぜなら私の娘だ、遊びならやめてくれ」と言うんです。
父親からそう言われた男は、すぐにパリを旅立とうとしますが、見送りに来た娘が、泣きながら「何人もの男に誘われているから寂しくない」と嘘をつく娘を見て、走り出した列車に抱き上げて連れ去るんです。
この列車のホームを泣きながら走る娘を、ずっと見つめていた男が彼女を抱き上げるシーンはメチャクチャ感動します!
⚫︎映画のはじまりは
ここはパリ、ロンドン、ニューヨーク、東京に似た大都市だ…
パリでは昼から誰もが、キスして、キスして、キスをしまくる、そんな光景を見ながら浮気現場を押さえる探偵からはじまります。
世界の大都市に、日本の東京が入っているのが嬉しいですね♪
⚫︎朝食はクロワッサンとコーヒー
探偵は娘と娘のネコと暮らしています。娘は父の探偵という仕事の内容を、いつもこっそりと見ていました。
父は浮気の現場を押さえては「不道徳なヤツだ」と言いながらクロワッサンをコーヒーに浸して食べる朝食を取ります。
⚫︎素敵なリンカーンみたいな人
娘は浮気相手のアメリカ人男性を「素敵なリンカーンみたいな人ね」と言うと、父はバーンと大きな音を立てます。浮気相手をアメリカ人だと知った依頼者は、夜の10時に殺してやると言って出ていきます。
リンカーンは夜10時に暗殺されたアメリカ初の大統領だったそうです。
⚫︎アメリカ人は娘をデートに誘う
「8時に会おう、ダメなら9時、じゃあ5時…」娘が仕事は?と聞くと「暇なときにするよ」と。
スケコマシはこうでなくちゃいけない!って言う感じのセリフでした。
第二次世界大戦でヨーロッパは大きな打撃を受け、物資不足や経済困難が続いていました。一方、アメリカは戦場にならずに経済が発展し、物資も豊富だったため、その「豊かさ」がより際立って見えていたようです。
フラナガンは「金持ちアメリカ人プレイボーイ」の典型です。高級ホテルに泊まり、シャンパンを開け、女性をエスコートし、物静かにしていても周囲に一目置かれる存在。これは当時のパリ市民が抱く「アメリカ人男性=裕福で自由人」といったステレオタイプを象徴的に描いています。
⚫︎男は高級ホテルに音楽隊を呼ぶ
金持ちアメリカ人は高級ホテル・リッツに泊まり、女性を呼び、音楽隊に「魅惑のワルツ」を演奏させるのです。
パリのカフェのオーケストラ用にイタリアの作曲家フェルモ・ダンティ・マルケッティが1904年に書いた作品が、1957年「昼下がりの情事」の主題曲となりリバイバルヒットしたそうです。パリのカフェでお茶を飲みながら聴きたいですね♪
⚫︎扁桃腺を取られたせい?
娘は男のことをこう言います
『彼は愛を信じてないの、でもヤキモチを焼いたのはいい兆候。子供のとき、扁桃腺を取られビタミンを注がれたせいよ、何かがおかしくなって、どんどん改造され、ロボットみたい、彼に心はあるの?』
これは男が全然自分に振り向かないことを扁桃腺やビタミンのせいにしているだけだそうです。現代医学では扁桃腺を取っても、性格が変わるようなことはないそうです。
⚫︎年齢差がありすぎるんじゃない?
「男は年をとっても魅力的」「女は若さが価値」といった当時のジェンダー感、古い価値観が、物語の前提にあったそうです。
中年男性の落ち着きや知識、財力を「大人の魅力」として描き、若い女性の好奇心や憧れが、中年男性の心を揺さぶるというドラマ性が描かれたんですね。
最後には、純粋な彼女の姿に、とうとう男は彼女を抱き上げてしまうんです。
それを陰から見届けた父親(探偵)はそっと帰って行きます。ホームには楽団が「魅惑のワルツ」を演奏して終わります。
