放浪記


1962年 日本映画

監督 成瀬巳喜男(なるせみきお)

脚本 井出俊郎(いでとしろう)

出演 高峰秀子

   田中絹代

   加東大介

   仲谷昇

   宝田明



⚫︎あらすじ


六月×日

爽やかな天気だ オッカサンも私も荷物を

背負って歩いている まったく暑い

ヨロヨロと荷をかついで 暑い町を歩く


幼いころから行商人の子として全国を渡り歩いたふみ子(高峰秀子)は、東京で下宿暮らしを始める


地方出身者の金もコネも無い女には大した職も無く、セルロイド作りの女工や、カフェーの女給をしながら最低限の暮らしをしていた


ふみ子はカフェーで売れない役者と出会い、役者の男はふみ子の詩をこう評する


「詩なんて作る人間はそれなりに人生を背負っていないと、いい詩は生まれないのかもしれないね」


ふみ子は、金の無い妻子持ちの役者、伊達春彦(中谷昇)に惚れて、一緒に暮らすことになり金を稼ぐため牛めし屋で働く


しかし伊達の妻がやって来て、伊達はふみ子をただの女中だと言う


仕方なくカフェーにもどるふみ子、カフェーに戻っても詩は書き続けていた


私が詩を書くのは、私の人生はこれだけで終わるんじゃないんだぞ、と自分に言い聞かせて、せめてもの慰めにしているのよ


私は学問が無いから難しいことは書けないのよ、詩は学問が無くても書けるからね、あればもっと書けるけど、無くっても書けんのよ


七月×日

童謡をつくってみた

売れるかどうかは判らない

当てにすることは一切やめにして

ただ無茶苦茶に書く 私の思いはそれだけだ


文士の福知貢(宝田明)がふみ子を訪ねてくる、そして何が食べたいんだい?と聞くとふみ子は答える

ゆでたまご あんこのたい焼き

いちごのジャムパン 蓬莱軒の支那そば


十月×日

夜更けて墓地の方へ散歩をする

本当に死にたいなんて考えないのだけれど

死にたいと心やすく言ってみる

それで何となく気がすむのだ

気がすむということは

一番金の掛からない楽しみだ

いつかは私もお墓になるときが来る

私はお化けになれるものだろうか

お化けは何も食べる必要が無いし

下宿代に責められる心配も無い

肉親に対する感情

恩返しをしなければならないという

つまらぬ呵責

みんなけむりのごとし


一二月×日

福地さんの家にお嫁入りして来たのだけど

今日も朝から何も食べていない

部屋であてもない原稿を書いた

毎日のように夫の原稿を雑誌社に持ち込む

しかし少しも売れないのだ


ふみ子の稼ぎで食いつなぐ福地は、暴力も振るうため、ふみ子は出て行くことになる


ふみ子の書いた放浪記が売れて出版記念会が行われた


ふみ子はあんな色男たちに本当にモテたのかしら?と疑われているところに福地が現れて言う


放浪記の女々しい男、福地貢です

おふみの作品は、ゴミ箱の中のゴミを棒で突っつき散らし、ぶちまけたような作品だと言ったやつがいた

僕も同感だが、ゴミ箱の中身のぶちまけられた嘘も隠しもない真実の美しさを見出した、おめでとう


ふみ子は

放浪記だけが私じゃないわ…





⚫︎感想


林芙美子の生活記って感じです


当時の日本は、面白いことが無いから、男女間のしがらみくらいしか話が無い


金の無いやつはそこにしがみつくしか無い


ふみ子は、ずっと好きだと言ってくる男には見向きもしないのに、ろくでもないちょっとした色男に惚れてしまってはバカを見る


最後の最後に売れっ子作家の金持ちになるけれど、ちっとも幸せそうには見えない


最後にこの詩が流れて終わる


花のいのちは みじかくて

苦しきことのみ 多かりき



林芙美子は実際、47歳で亡くなります

働き過ぎの心臓麻痺と言われています…