タイガー 甦る伝説のスパイ


2017年 インド映画

監督 カビール・カーン

脚本 カビール・カーン

出演 サルマン・カーン

   カトリーナ・カイフ



インドで大人気のスパイ映画です。インドの大スター、サルマン・カーンが演じるアクション映画タイガーシリーズの第二弾です。



⚫︎あらすじ


テロ組織 ISC はイラク軍の攻撃によって負傷した指導者アブー・ウスマーンの治療のためにイラクのイクリット市立病院を占拠し、人質としてインド人とパキスタン人40名の看護師グループを拘束する。


ISCの壊滅を図ろうとするアメリカは、アブー・ウスマーンを殺害するため7日以内に病院ごと空爆することを決定。実際に空爆が行われれば人質となった看護師たちの命はない。


インドの国家諜報機関RAWのシェノイ長官は、看護師救出のための最終手段として伝説のスパイ、タイガー(サルマーン・カーン)を作戦に投入することを提案する。


タイガーはRAWの記録上では8年前の任務で死亡したことになっていたが、パキスタン国家諜報機関ISIのエージェントだったゾヤ(カトリーナ・カイフ)と結婚してオーストリアの山中でジュニアと呼ぶ幼い息子と平穏な生活を送っていたのだった。


タイガーはスパイを引退していたものの、RAWのエージェントであるスナイパー、ハッカー、爆発物処理専門家と共にチームを組み、看護師救出作戦を実行に移す。


彼らはISCの支配地域に潜入しISCに労働者を斡旋する人物フィルドウスと出会うが、彼もまたRAWのエージェントであることが判明する。


そしてタイガーの妻であるゾヤと他のISIエージェントも作戦に加わり、インドとパキスタン両国の看護師救出に動き出す。







⚫︎感想


「タイガー 伝説のスパイ」の第2弾です。

インド版ミッションインポッシブルっていう感じです。


第1作目のストーリーで、インドの工作員タイガーが、敵対する国パキスタンの女性工作員ゾヤに恋をします。


そして今回の第2作目ではインドから離れて美しいゾヤと息子と暮らしています。


そんなある日、イスラム過激組織によりインド人看護師25人、パキスタン人15人が捕虜になってしまいます。


インド政府は伝説のスパイ・タイガーを探しだし、人質救出の任務を命じます。


イスラム対アメリカ、インド対パキスタン、そしてとてつもなくタフなタイガーと美しくて強いゾヤのアクションとラブロマンスストーリーです。


途中インターミッションの入る長い映画なんですが、飽きずに楽しく観ました。そして最後にはボリウッド映画お決まりの歌って踊って終わります。


インド映画おもしろいです!



⚫︎ISCとはISのこと

ISとはイスラミック・ステート、通称「イスラム国」のことです。


中東のシリアやイラクを拠点とするイスラム過激派組織。 自ら国家樹立を宣言して「Islamic State(イスラム国):IS」と称しているが、国際社会は国家と認めていない。 自ら信じるイスラム理想社会を実現するために、戦闘、殺人、テロ、誘拐などをいとわない武装組織で、イスラム法に基づく反欧米国家を目ざしている。



⚫︎池上彰さんの説明より


湾岸戦争のときには、数多くの国が多国籍軍に結集しましたが、イラク攻撃では、ほぼ米英軍だけの攻撃になりました。他国は、アメリカの乱暴なやり方に批判的だったからです。


この攻撃でフセイン政権は崩壊しました。しかしアメリカは、戦後処理につまずきます。バース党員を全員、公職から追放してしまったからです。


イラクは、バース党(アラブ復興党)の一党独裁でした。イラクで出世するにはバース党員でなければなりませんし、優秀な人物は、バース党にリクルートされていたのです。自分から志願してバース党員になった人間は、ほとんどいなかったのです。


そんなことは知らないブッシュ政権は、バース党員全員を公職から追放しました。その結果、警察と軍は一瞬にして消滅してしまいました。警察官も軍の将校たちも、バース党員だったからです


学校の先生も、役所の公務員たちも、バース党員でした。アメリカのブッシュ政権は、見事に(!?)イラクという国家全体を破壊したのです。


治安組織が崩壊したイラク国内では、イスラム教のスンニ派とシーア派が対立。内戦状態の様相を呈します。この内戦の中から、スンニ派過激組織が生まれます。これが、「イスラム国」の前身の組織です。この組織は、やがて名称を「イラクのイスラム国」と名乗ります。


一方、中東アフリカでは2010年から「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が始まり、シリアのアサド独裁政権に反対するデモが発生すると、アサド政権は、反対派を容赦なく弾圧。遂に内戦に発展します。


これを見た「イラクのイスラム国」は、組織名を「イラクとシリアのイスラム国」と改称。シリアに入っていきます。シリア国内では、アサド政権と戦うよりは、むしろ反政府勢力を襲撃。資金や武器を手に入れて、イラクに戻ってきました。


これに驚いたイラク政府軍は、恐れをなして逃げ出し、「イラクとシリアのイスラム国」は、支配地域を飛躍的に拡大。遂には名称を単に「イスラム国」と名乗るようになりました。「イスラム国」は、支配地域の面積ではイギリス並みとなり、人口は800万人にも上っています。


こうした領土と人口を支える官僚組織は、かつてフセイン大統領の下で働いていた官僚たちです。統治能力に優れ、過激な「イスラム国」を支えています。


歴史に「もしも」はありませんが、もしブッシュ大統領(息子のブッシュ)がイラクを攻撃しなかったなら、もしバース党員を追放しなかったなら、「イスラム国」は生まれなかった可能性が高いのです。


ブッシュ大統領は、イラク攻撃の前、「日本もドイツも、アメリカと戦争をしたが、アメリカによって敗れた結果、民主主義国に生まれ変わった。だからイラクも民主化することができる」と発言していました。歴史を知らない、あまりに乱暴な論理でした。歴史を知らない指導者は、危険極まりない存在であることを示したのです。


https://books.bunshun.jp/articles/-/1381



IS(イスラム国)はイラクに対する英米軍の一方的な湾岸戦争に対する怒りから生まれてきた、もとフセイン大統領の下にいたパース党の人たちだったんですね。


インドとパキスタンの歴史も、インドを支配していたイギリスが、インドの独立を弱めるため、インド内での宗教による民族紛争を起こさせました。それによりヒンドゥー教のインドからイスラム教のパキスタンが分裂してしまいました。


そう考えると、イギリスやアメリカの支配による怒りからすべてが始まっている感じがします。


過激なISのやり方はいけないと思いますが、なぜそうなったかを知ってから映画を観ると、冒頭でISのボスが言っていた「アンクル・サム」の話も理解しやすいです。




アンクル・サムとはアメリカ政府やアメリカ人を擬人化したキャラクターのことです。


ある日アンクル・サムがやって来た。「中東に新たな秩序が必要だ」と言って。しかし真の目的はビジネスと帝国主義。アンクルサムは狼の群れを手なずけ、その土地の者たちに殺し合いをさせた。そしてビジネスが終わると群れと交わした約束をことごとくやぶり、金を持って逃げた。私は群れのボス。これから祖国を支配する…