雨あがる


監督 小泉堯史(こいずみたかし)

脚本 黒澤明

原作 山本周五郎

出演 寺尾聰

   宮崎美子

   三船史郎

   原田美枝子

   吉岡秀隆


黒澤明は脚本執筆中に骨折して療養生活に入り、完成させることなく亡くなってしまいました。小泉監督が黒澤から聞いた構想を参考にして完成させたのがこの作品です。



⚫︎あらすじ


亨保の時代、お人好しで武芸の達人である三沢伊兵衛とその妻・たよが、長い大雨で河を渡れず宿場に足止めをされることになります。


長雨で苛立っていた農民たちを見るに見かねた伊兵衛は大量の食材を買って来て振る舞うのでした。


妻のたよには、なんども辞めてくれと願っている掛け試合をしたのだと分かります。


ある日、若侍の諍いを難なく仲裁した伊兵衛は、通りかかった藩主に見込まれ、城に招かれ、藩主は彼が剣豪であることを知り、藩の剣術指南番に迎えようとします。


職にありつけるかもしれない、大きな期待を胸に吉報を妻に約束する伊兵衛だった。


しかし、武士として賭け試合をするなどとは不届き千万。ということで、残念ながら師範の話は無かったことになってしまいます。


それを聞いた妻は伝令に来た家臣に…

「主人が掛け試合をしたのは

悪うございました

私も辞めてくれと願っていたのです

でも その願いは間違いでした

主人も掛け試合は不面目だと

知っていたと思います

大切なことは

主人が何をしたかではなく

何のためにしたかと言うこと

ではございませんか

あなたたちのような でくの坊には

お分かり頂けないでしょうが」


伊兵衛が「おやめない」というと


「はい やめます

あなたにだけ申し上げます

これからは掛け試合をしてください

そしてこれからも

貧しくて気の毒な方たちを

喜ばせてあげてくださいまし」と。


晴々とした空、青青とした緑に誘われ再び当てのない旅に出る三沢夫婦。しかし二人の心はいつにもまして晴れやかだった。


それを聞いた殿様は「すぐに指南役に連れて参れ」と言い、自らが馬を走らせて二人を迎えに向かうのだった…







⚫︎感想


清々しい気持ちになる物語りでした。

腕の立つ浪人が寺尾聰

その奥方が宮崎美子

話のわかる殿様が三船史郎です。

三船史郎は三船敏郎の息子さんです。


いつも感じることなんですが、この時代の女性の強さと美しさを感じます。


伊兵衛はめっぽう剣の腕が立つ武士なんですが、たぶん藩内での立ち回りが下手くそなんでしょうね。


そんな主人を持つ妻は

「これだけ立派な腕を持ちながら

花を咲かせることができない

でも私このままでようございます

人を押しのけず 人の席を奪わず

機会さえあれば

貧しいけれど真実な方達に

喜びや のぞみをお与えなさる

このままの貴方も立派ですもの」


人を押しのけてまで出世することができない心優しい武士と、そんな夫を理解し支える妻の心温まる絆を描いています。


小泉堯史監督作品

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