エデンの東


1955年 アメリカ映画

監督 エリア・カザン

脚本 ポール・オズボーン

原作 ジョン・スタインベック

出演 ジェームズ・ディーン



父アダムは双子の弟アーロンを溺愛し、兄キャルは父から疎まれます。しかしアーロンの婚約者エイブラは、そんなキャルを気にかけていました…



⚫︎あらすじ


離れた街で商売をする女性のあとを追うキャル(ジェームズ・ディーン)、しかしその女性とは話もできずに帰って行く。


父のアダムは氷漬けにされていた太古の象が、そのまま発見されたことに目を付け、野菜の冷蔵保存を考えていた。


弟のアーロンは父の考えに賛美するが、キャルは戦争が始まるから、今なら冷蔵よりも大豆が儲かると言う。しかし父は「金儲けに興味は無い」とキャルの意見を突き離す。


キャルはまた離れた街の女性に会いに行くが追い帰されてしまう。そのときに保安官からあの女性はキャルの母ケートだと聞かされる。


アーロンの彼女エイブラは「私も別の女性と再婚した父を憎んでいたが、許すことで心が楽になった」とキャルに打ち明ける。


いよいよ父は氷漬け野菜を列車に乗せた。しかし雪崩で列車が立ち往生して、氷が溶け出し大損害を出してしまう。


キャルは損害を取り戻すため、大豆相場に手を出す。「農家に大豆1ポンド5セントで契約し栽培させる。そして戦争が始まり値が上がると1ポンド10セントで英国に売れる」しかし「金を儲けるには金がいる」とも言われる。


キャルは商才のある母に金を借りに行く。そしてなぜ家を出て行ったかとも聞く。「アダムの頭の中は聖書でできている、息苦しくなって出た。あんたは私に似ている。勘が鋭くきれいごとに騙されたりしない」


第一次世界大戦が始まりアメリカではドイツ系住民に対する憎悪の感情が湧き出していた。


ある日、キャルは遊園地でエイブラとばったり会う。エイブラはアーロンの誠実な愛を聞くたびに、自分が悪の存在に思えてくることを明かす。「アーロンは亡くなった誠実な母親像を私に重ねているが、自分はそんな女じゃ無い…」


キャルは父の誕生日の飾り付けをエイブラに一緒にして欲しいと頼む。そして誕生日にキャルは大豆で儲けた金を父に渡すが、すかさずアーロンがエイブラとの婚約をプレゼントしたことで後回しになる。


そして金を見た父は「戦争で得た金など受け取れない、騙した農家に金を返せ。私が欲しいのはアーロンのような誠実なものだ」と言う。


泣いて出て行くキャルをエイブラが追う、それを追って来たアーロンは「エイブラに近づくな、お前は根性の曲がったワルだ」

そう罵られたキャルは、真実を見せると言ってアーロンを母親に会わせる。


一人で帰ったキャルに父が「アーロンはどこだ」と尋ねると「父さんは、母さん似の俺を愛せない。ずっと妬んでいた。今夜金で父さんの愛を買おうとしたが、もう要らない」


そこへ自分の描く母親像との違いを見たアーロンが、兵役志願して出て行ったとの知らせが入る。父はショックで脳卒中になる。


保安官は「カイン兄弟アベルを殺せり、去りてエデンの東、ノドの地に住めり…お前も去ったら?」とキャルに言う。


ベッドに伏せる父にエイブラは「愛されないのは悲しいことです。キャルにあなたが何かをして欲しいと求めれば愛が伝わる」と。


父はキャルにそっと「看護婦ではなく、お前がそばにいてくれ」と頼むのだった…




⚫︎感想


中学生のころに学校の推薦映画として観に行きましたが、良く理解できませんでした。


少し大人になってからも観たことがありますが、特に面白いとも思いませんでした。

そのため今回は少し予習してから映画を観ました。


エデンの東とは旧約聖書に出てくるカインとアベルという兄弟の話しからきていたんですね。


少し予習してから観たら、めちゃくちゃいい映画でした。ラストの父がそっとキャルに囁くシーンでは父アーロンの声が聞こえてないのに言っていることが分かります。涙が出ます。


皆んなじゃないと思うけれど、私みたいに理解力の少し乏しい人は、先に映画の予習をして観るのもお勧めです。


あらためて観て見ると登場人物は基本的に、みんな良い人です。

父アダムは宗教的な教えが強いばかりに、新しい考え方をする者や金儲けをする者を嫌い軽蔑してしまいます。

そんな父を愛している双子の息子ケイレブ(愛称:キャル)とアーロン。

弟のアーロンは父の考えに服従していて可愛がられますが、キャルは少し違う新たな考えを持っていました。

こういった考え方の違いが、また新しい宗教となって分かれていくんでしょうねェ。

宗教対立でイギリスを離れたピューリタンたちはメイフラワー号でアメリカにやってきました。

ピューリタンは、カトリック教会やイギリス国教会から分離独立し、厳格で清純で潔癖な生活を送るべきだと考えている人たちです。

きっと父アダムはその子孫で、とても敬虔なキリスト教徒なんでしょうね。

アメリカでは今でもダーウィンの進化論を教えない州があると聞きます。

人は神が造ったものですから、猿から進化すると神の教えと違っちゃいますからね。



⚫︎カインとアベル

アダムとイヴの息子たちで、人類初の殺人の加害者と被害者です。


アダムとイヴがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟です。カインは農耕を、アベルは羊の放牧をしました。

2人は収穫物をヤハウェに捧げます。

カインは収穫物を、アベルは肥えた羊の初子を捧げました。

しかし、ヤハウェはアベルの供物だけに目を留めて、カインの供物には目を留めませんでした。

このことを恨んだカインはアベルを誘い出し殺してしまいます。

ヤハウェにアベルの行方を問われたカインは「知りません。私は弟の番人なのですか?」と答えました。

しかし、大地に流されたアベルの血はヤハウェに向かって彼の死を訴えました。

カインはこの罪により、エデンの東にある地に追放されました。



⚫︎ジェームズ・ディーン

1931年2月8日〜1955年9月30日

アメリカの俳優


自動車事故のため24歳で亡くなった伝説の俳優です。

身長170センチと決して身長は高くなく、猫背気味で髪型は無頓着に見え、服装もヨレ気味な、そして時折悲愴感を漂わせるアンニュイで反抗的な姿でした。

それまでの高身長なハリウッドスターとは違った"男性の格好良さ"として大衆に強く認識されました。


父はメイフラワー号に遡る家系で、母はインディアンの血が半分入る家系でした。

行きずりの恋から始まった婚前妊娠だったことから父は息子ジェームズの誕生を喜ばなかったそうです。

父親との確執、彼の唯一の理解者であった母親の死、そしてその後の牧師からの性的虐待や自身の性的マイノリティの葛藤など、常に不安感や孤独感に苛まれていだそうです。

ジェームズ・ディーンはまさにキャルそのものだったんですね。