御法度


1999年 日本映画

監督 大島渚

脚本 大島渚

原作 司馬遼太郎

出演 ビートたけし

   松田龍平

   浅野忠信

   武田真治



幕末、新選組でおきた衆道(男色)の話しです。司馬遼太郎によるフィクションを大島渚が映画化しました。松田龍平のデビュー作です。



⚫︎あらすじ


1865年の京都、新選組は新たな剣士を入隊させるため剣術の見定めをしていた。そして美少年の加納惣三郎(かのうそうざぶろう)と、田代彪蔵(たしろひょうぞう)が選ばれた。


田代は衆道(男色)だったため、毎晩のように惣三郎を衆道に引きずりこもうとしていた。そんな中、やはり惣三郎に思いを寄せていた隊員の湯沢藤次郎(ゆざわとうじろう)が何者かに暗殺される。


土方歳三は、惣三郎の恋敵が湯沢を斬ったのではないかと考えていた。近藤勇に相談すると「惣三郎を始末しろ」という。土方は「しかし御法度ではないし、若い隊士に酷だ」と言った。


近藤は「では遊郭で女を教えろ、大体なぜいつまでも惣三郎は前髪なのだ」と怒りを見せる。


土方は山崎丞(やまざきすすむ)に惣三郎を遊郭に連れて行くように指示をする。しかし惣三郎は遊郭では遊ばずに先に帰ってしまうのだった。仕方なく山崎も遊郭を出ると、何者かに襲われてしまう。襲われた現場には田代の小刀が落ちていた。


近藤は、御法度を破り隊員を襲った田代を惣三郎に始末させろと命じる。見届け役になったのは、土方歳三と沖田総司だった。


そのときに沖田が最近読んだ『菊花の契り』という本の話しをする。あれは衆道の話しではないかと言い、近藤さんと土方さんもそうではないかと言う。土方が怒りをみせたとき、田代がやって来た。


田代は「惣三郎、俺を犯人に仕立て上げたな」と言って斬りつける。すると惣三郎が田代にそっと何かをつぶやく。田代が動揺した瞬間に惣三郎が田代を斬った。


見届けた土方が帰ろうとすると、沖田は「先に帰ってください」と言って惣三郎のいた方に去って行く。するとそちら方向から断末魔が聞こえてくる…




⚫︎感想


新選組内の男色の話は司馬遼太郎によるフィクションだそうです。

しかし、実際の新選組に加納惣三郎という人物は居たようです。島原通いが好きで金が無くなると辻斬りをしていたため、土方歳三が斬ったそうです。


男同士の同性愛を描きながら、実は近藤勇と土方歳三もそういう仲だったんじゃないの?って言うような話しにもなっています。男気溢れる新選組ファンには嫌がられる内容かもしれません。


まあ男性だけが集まるところには、昔からそういうことはあったんだろうと思います。



⚫︎加納惣三郎(かのうそうざぶろう)

18才で新選組に入隊して、近藤勇の秘書役となり、「今牛若」と呼ばれていたそうです。

19才で京都の花街「島原」にはまり、金が無くなると島原近くで裕福そうな客を見つけては、辻斬り強盗をしていました。

近藤勇が田代という腕利きの隊士に加納惣三郎を斬るよう極秘命令を出しましたが、返り討ちにあってしまいました。

その数日後、島原帰りの加納惣三郎を待ち構えていた土方歳三に斬殺されました。


加納惣三郎の辻斬りのせいで、島原の客が減ってしまったそうです。それは新選組の汚名にもなるため極秘に斬殺されたのでしょうね。

惣三郎はそういう隊士だったために、本当に居たのか居なかったのかという謎になってしまったのではないのでしょうか。



⚫︎前髪

江戸時代の男性は、1516歳になると前髪を落として元服し、大人になったことを表明しました。

また江戸時代は髪型で武士か町人か、その身分がわかるようになっていました。 



⚫︎雨月物語、菊花の約(きくかのちぎり)

学者の左門は、病に伏せる武士の宗右衛門と出会い介抱をします。

そして介抱しているうちに、左門と宗右衛門は親交を深め、兄弟の契りを結びます。

病が回復した宗右衛門は、重陽の節句には必ず左門のもとに帰ってくることを約束して故郷へ帰ります。

しかし帰って来た宗右衛門は、自分はこの世の者ではない、死霊であると言うのです。


本当に仲良くなった男と男の話しです。故郷で亡くなってしまった宗右衛門が、約束を果たす為に魂で左門のところへ帰って来るのです。沖田総司はこの物語りを衆道と考えたのです。





⚫︎衆道とは

主君と小姓(こしょう:将軍のそばに仕えた者)の間での男色の契りのことです。

 肉体的だけでなく精神的な結びつきを特に重視しました。 男色は絶対服従の関係・絆を築く一種の儀式という認識もあったのでしょう。 

衆道の予兆は、源平合戦のあった平安時代末期にもすでにありましたが、衆道文化が花開くのは戦国時代です。