野獣死すべし
1980年 日本映画
監督 村川透
脚本 丸山昇一
原作 大藪春彦
出演 松田優作
小林麻美
鹿賀丈史
室田日出男
戦場での悲惨な体験から人を殺すことに快感を覚えてしまった伊達邦彦。大藪春彦のハードボイルド小説の主人公を松田優作が演じた…
⚫︎あらすじ
大雨の夜に警察官が何者かに刺殺され拳銃が奪われる。その拳銃でカジノが襲撃され従業員は皆殺しにされ売上げ金が奪われる。
伊達邦彦(松田優作)は、東大卒のエリートで射撃競技の選手だった。かつては通信社に勤め、戦場での悲惨な殺戮を繰り返し見ていた。そして自らも殺されそうになったとき、咄嗟にその相手を銃で殺すと、えもいえぬ快感を覚えた。
伊達は次のターゲットを銀行に決めて、綿密に下調べをする。そしてレストランにいた反抗的な目をした男、真田(鹿賀丈史)を仲間にする。
伊達は真田に銃の扱い方や、人の殺し方を教育して銀行を襲撃。またも現金を奪うことに成功するのだった。
警視庁は躍起になって犯人を探していた。ただ一人、柏木刑事(室田日出男)だけは刑事の勘を信じて伊達を追っていた…
⚫︎感想
ハードボイルドが似合う俳優といえば松田優作です。高倉健や、渡瀬恒彦も似合いますね。
なかなか死んだような目をしながら、女性が犯されているところを無感情に見ていたり、無表情で人を殺せるシーンが似合う俳優って少ないと思います。
それに最近ではコンプライアンス的なこともあって、このような映画はだんだんと撮れなくなってるんじゃないでしょうか。
⚫︎ハードボイルド
暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいう。
ハードボイルドはゆで卵が固くゆでられた状態、それが転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す。
⚫︎大藪春彦(おおやぶはるひこ)
1935年2月22日〜1996年2月26日
日本の小説家、狩猟家。
1935年日本統治下の朝鮮で生まれ、1945年には日本が敗戦すると、日本の高官は日本人を見捨てて早々に帰国。残された日本人たちは朝鮮人になぶり殺しにされるのを目にする。大藪は盗みを働き、ソ連兵に銃剣で刺されながらも生き延びる。そして1946年非合法な闇船で日本に帰国する。
この体験が反権力という作風に反映される。大藪は「自分で体験したことしか書けない」と言う。
1958年、処女作の「野獣死すべし」は江戸川乱歩に紹介され、脚光を浴びる。
1965年、全米ライフル協会の大会で最優秀射手となる。しかし所有していた拳銃を友人に持ち出され銃刀法違反で有罪判決を受ける。
1971年、レーシングチームを作り日本グランプリで6位になる。
朝鮮半島での壮絶な体験、銃の扱い方、車好きなどが、映画の中にも描かれていました。
⚫︎伊達邦彦(だてくにひこ)
大藪春彦が創造した架空の人物。大藪の処女作「野獣死すべし」から断続的に登場する。ハルピンで生まれ、平壌で終戦を迎えるが、帰国船をよこさない日本政府に痺れを切らし、日本人集団で船を借り佐世保にたどり着く。このように大藪本人の経歴と重なるところが多い。
⚫︎松田優作(まつだゆうさく)
1949年9月21日〜1989年11月6日
山口県下関市出身の俳優。
180センチある日本人の父と韓国人の母の間で非嫡出子(婚姻関係でない子)として生まれる。しかし後にそのことを知り孤独を感じるようになる。
アメリカに渡り演劇と出会い、日本の文学座に入る。同期は高橋洋子、1期後輩に中村雅俊が、1期先輩に桃井かおりがいた。
「野獣死すべし」では山籠りして10キロ減量し、奥歯を4本抜いて頬をこけさせ撮影した。
「ブラックレイン」でハリウッドデビューをした時には癌に侵されていたが、周囲には言わずに撮影した。