第1章

アパレル不況を正しく理解する

成長する世界と停滞する日本


アパレルに未来はあるか

1.人が服を着なくなることはない

2.日本には独自文化がある

独自文化を持つ国はフランスやイタリアなど一部の国に限られている。

3.テクノロジーがチャンスをもたらす

販売系ならZOZOやファーフェッチ※1など、広告系ならInstaなどがある。

※1.世界中のラグジュアリーファッションのデジタルマーケットプレイス


成長のチャンスはグローバル化

・世界的に伸びている市場は南米、中東、アフリカ、アジア。

・アメリカ・中国は世界最大の市場、アパレルにおいてはアメリカと中国で世界市場の40%をしめている。

・アメリカは富裕層と高所得者の増大でラグジュアリー(Lヴィトン.HERMESなど)とアクセシブル※2ラグジュアリー(coach.FURLA.トリーバーチなど)が伸びている。

※2.「手の届く贅沢」という意味

・中国は中間層の所得増加が売り上げを牽引している。


日本のアパレル市場

1.フォロワー層の減少

フォロワー層とは戦後の高度成長が産んだ日本固有のものでトレンドに流され受動的に消費する人のこと。

2.少子高齢化

現在第一次ベビーブームは70代になった。アパレルの支出は50代でピークを迎え70歳を超えると大きく減少する。

3.単価の下落

・メルカリなどによるC to C市場拡大によるリユース市場の拡大。

ECで安く買う

同じような商品ならネットで安い方を買う。

オフィスのカジュアル化

ビジネスエリートのイメージがGAFAの登場で変わってしまった。S.ジョブズやM.ザッカーバーグのようなノームコアと呼ばれる「服に費やす手間や費用を省くこと」がスタイルとなった。

4.消費税などによる家計の圧迫


インバウンド、越境ECは拡大出来るか

1.インバウンド特需

中国、韓国、台湾、香港などの東アジア客が全体の7割。(この本はコロナ前の発売)

2.越境ECの拡大

越境ECはインターネット通販サイトを通じた国際的商取引のこと。

日本製商品の人気は、化粧品、医薬品、トイレタリー分野が多いがアパレルも増えている。



第2章

デジタル化がもたらす変化


1.インフルエンサーの登場

Instagramの出現で一部の消費者はインフルエンサー※3やプロシューマー※4となりファッションの発信源になった。

※3.影響力の大きい人物

※4.生産活動を行う消費者


2.レコメンデーション機能の影響力

ユーザーに価値がある商品や情報を提示する機能のこと。

・エアクローゼット

衣装レンタルサービスでプロスタイリストが提案した服を借りて着るシステム。


3.D to Cが増える

direct to consumerとは自社商品を自社ECで消費者に売る直販サイトのこと。ZOZOや楽天などのモールにはあまり出ず、コアなファンを作りあげている。

D to Cは早く小規模に始められて収益性が高い。

・WEAR

誰でも参加できるファッション購入サイト、投稿されたコーディネイトを見ることも購入することもできる。


4.ムダな在庫が減る

リアル店舗と異なりECならアイテムが少なくても大丈夫。新商品を少量でテスト販売して生産量を決められる。


5.現場の効率化

・シタテル

縫製工場をデータベース化してアパレル企業のニーズにマッチングして効率化、工場も空いている時間が減り稼働率アップにつながる。


6.受注生産と大量生産の両立

マスカスタマイゼーション

消費者が求める商品だけを最適な形で敏速に届ける。

・カシヤマ・ザ・スマートテーラー

価格は3万円から、納期は最短1週間と短く消費者の支持を集めている。



第3章

AIはアパレル産業をどう変えるか

AI(人工知能)を4つに分けて考える


1.画像解析

大量の画像データをディープラーニングという学習技術でトレンド予測する。しかしファッションは誰かにすすめられたというエモーショナルな部分も重要なのだ。


2.音声解析

音声スタイリングアシスタントやウェブ接客サービス。


3.テキスト解析

チャットボット(チャット+ロボット)によるコンシェルジュサービス。

UNIQLO IQ→2018年よりスタート


4.データ解析

どのアイテムを、どのタイミングで、どの程度割引くと利益が最大化できるかを判断する。

・しまむら→2016年より実用化


ITリテラシーを養うことが、変化の早いデジタル社会を生きるための大前提だ。



第4章

世界の最先端は何が起こっているか

デジタル・ファストファッション


・ブーフー(2006.英)

顧客の反応で追加オーダーするため、発注量の精度が極めて高い。デジタルネイティブ世代のためのファッション企業。

・エイソス(2000.英)

海外通販を感じさせない。配送と同じ商品がエイソスより安い場合は購入後に割引クーポンが受け取れる。

・エディデッド

世界最大のファッション情報提供サイト、企業はエディデッドにアクセスするだけで競合比較やトレンド分析が可能。


スティッチフィックス(2011.米)

AIによるスタイリングのサブスク

ユーザーは初回登録時にサイズや服の好みを答えるだけで毎月か2ヶ月に一度5アイテム郵送されてくる。気に入れば購入して要らなければ返送するだけ。何も買わなければスタイリング料20ドル掛かるが1つでも買えば20ドル割引される。

アメリカは日本のようにファッション雑誌の文化が無く自分に似合う服を知らない消費者がたくさんいる。


リフォーメーション

サステナビリティ(持続可能性)をコンセプトにデッドストックや環境に配慮した天然素材が使われている

EC化80%だが実店舗もある。顧客はタッチスクリーンで服を選び試着室に入ると試着室内外から入れるクローゼットに服が用意されている。別の商品が試着したければ試着室内のタッチスクリーンでタッチすれば再びクローゼットに補充されるシステム。店員と話さなくてもいいシステムなのだ。


Amazonのプライムワードローブ

有料プライム会員対象で購入前の服を1週間自由に試着して気に入らないものは送料無料で返送し、気に入った服は購入できる。また自撮り機能付きのAmazonエコールックを使って撮影した写真をSNSに投稿したりAIのコーディネートアドバイスも受けられる。



第5章

2030年の消費市場はどうなるのか

デジタル化で日本の5年以上先を行くアメリカの現状から想像してみよう


アメリカ百貨店の新業態

ノードストローム・ローカル

顧客はオンライン注文した商品を試着室で着ながらスタイリストによる無料アドバイスを受ける。それ以外の商品在庫は店舗に存在せずバーカウンターやネイルサービスなどだけが設置されている。服を直接売らない百貨店の新しいスタイル


アメリカの新たなショッピングモール

1.ハイエンドモール

高級ブランドやミシュランレストランだけのラグジュアリーサービス。

・バル・ハーバー・ショップス

米マイアミの富裕層向けモールはブルガリ、ハリー・ウインストン、ショパールがなどが軒を連ねる。


2.ライフスタイルセンター

ショッピング以外の需要に対応して「消費の場」から「生活の場」へ

・ユニバーシティ・プレイス

米ノースカロライナのモールでは人々が集うコミュニティ・ハブを目指した。食事できる映画館や子供向け博物館、料理教室やスポーツ施設、ラジオ局や公共機関を誘致して生活インフラ機能を強化


リアル店舗に必要なのはECには無い価値

図書館、オフィススペース、居住スペースなど消費に留まらない地域住民の生活インフラとしての価値を強め、集客量や滞在時間を延ばして消費を促進することが狙いだ。ECには無いリアル店舗の強みを発揮し、消費を超えた体験や独自価値を提供することだ。


2030年はデジタルネイティブ時代

ミレニアル世代※5やZ世代※6を足した割合が生産人口の65%となる。スマートフォンやスマートウォッチを使いこなして消費する時代になる。そして所有から借りて利用するという流れは自動車や不動産など様々な業界に波及が進むだろう。


※5.1980年代序盤から1990年代中盤までに生まれた世代。インターネット普及前の時代に生まれた最後の世代で、幼少期から青年期にIT革命を経験したデジタルネイティブ最初の世代。


※6.日本では1990年後半から2012年頃に生まれた生粋のデジタルネイティブ世代。


しかし日本のデジタル化は遅い。それは社会インフラが完成していることと、高齢化社会という人口ピラミッド構造だからである。



第6章

アパレル産業は今何をすべきか


中価格帯のトレンドは縮小

ラグジュアリー市場は投資対象に

ユニクロなどグローバルSPA※7は躍進する


※7.製造小売業、自社製品を自社店舗で販売


メルカリで売れているブランドは、1位ユニクロ、2位ナイキ、3位アディダス。ユニクロは何十回着てもへたれないほど品質が高いので中古でも売れる。


日本の輸出は生地が多く洋服は少ない

イタリアの輸出は2.6兆円、フランスの輸出は1.3兆円、日本の輸出は500億円しか無い。しかし日本の生地の輸出は3200億円でフランスやイギリスを上回る。


ブランド力の高め方

靴、バック、香水、時計、宝飾品というようにカテゴリーの拡大でブランド力を強化し、高収益の体質を実現する。例えばバックは80〜90%の粗利を稼ぐ利益の源泉と言われる。


日本がアクセシブルで勝つためには

1.日本らしさ

日本で生まれた理由や背景やストーリーがあった方がいい。

ストリート(裏原宿文化)

アベイシングエイプ

テクノロジー

ユニクロのハイテク素材

ジャパンブルー

45Rの藍染のデニム、インディゴ、

ジャパニーズ・ミニマル

良品計画は禅の世界を想起させる

アルチザン(仏語.職人)

サカイ  デザイナー阿部千登勢


2.独自性

日本では成り立たないニッチなブランドでも世界のどこかにいる特定の人に響けばビジネスが成立する。


3.ビジネス基盤の確立

会計、経理、財務、取引先マネジメント、組織づくりなどクリエイティブと経営管理は分けて考える。


終わりに…

過去の栄光にいつまで縛られているのか

平成元年の世界時価総額ランキングの上位50社中に日本企業は32社入っていた。それが平成30年には35位のトヨタ1社になってしまった。現在のトップはGAFAである。


日本は従来型社会の団塊世代が改革を遅らせてしまった。ソフトバンクやファーストリテイリングのようなグローバル感覚に長けた企業は停滞の30年間に企業価値を高めた。


日本は模倣をやめ、徹底的な独自性の追求と価値の磨き込みを行い変革しなければいけない。