第10部 ブルー・スウェアー 第20章 絶望の果て | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
「あっ、今連絡がきて、友人が行方不明になっていて、ちょっと様子をみてくる!」
「こんな時間に!?」鈴華は納得ができないといわんばかりにいいはなった。
「一刻を争うんだ」
「明日だっていいじゃない!?電話をくれた人が様子を見にいけばいいじゃない!?」
「そんなこといってる場合じゃない!命がかかっているんだ!?」俊也は面倒くさそうにいった。
「誰の!?誰の命がかかっているの!るの?」聞き分けのいい鈴華が珍しくくってかかった。
「またゆっくり説明するから、ちょっと行ってくる」俊也はそそくさと部屋を出ようとしたとき、鈴華は怒鳴り声をあげた。
「行かないでよ!!」鈴華の怒鳴り声に俊也はピタッと立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「行かないでよ!」鈴華は泣きそうになりながら言い放つと俊也は鈴華の方をゆっくりと振り返った。鈴華の目はウルウルとした目で赤くなっていた。
「いいじゃない!?死にたいなら、そうさせてあげれば・・」鈴華の言葉に俊也は思わず耳を疑って鈴華の方をみた。
「おまえ・・」
「だってそうじゃない!?そうすることでその人が楽になるなら・・」鈴華はそういいかけて言葉を濁した。
「お前ってそんな冷たいな」
「・・・」鈴華は憤然とした表情(かお)で俯いていた。
「俺はそうは思わないから」俊也は鈴華にそう言い残して部屋を出ていこうとしたとき、鈴華の顔は苦渋に歪みながら大声で身体中から叫び声をあげた。
「行かないでよっ!!」鈴華の言葉を超えた思いが声にいつも以上に俊也は凍りついたように立ち尽くした。
「いったら私が死んでやるから!」鈴華の顔は真っ赤になりながらいった。
「・・・」俊也はあまりの剣幕に言葉を失っていた。
「私をとるの!?その人をとるの?」
「おまえどうしたんだよ!変だよ」
「おかしくもなるわよ!!何も知らないと思ってる!?昔の恋人が死んだってあなたに何か関係あるの!?何も関係ないじゃない?もう他人なのよ。あなたの気を引きたくてやっているのか?もし違っていたとしてもその人の人生じゃない!違う!?その人がどうなろうとあなたには関係ないじゃない。答えてよ。その人の命をとるの?私の命を取るの?」鈴華は答えて!といわんばかりにいった。
「何でそんな事をいうんだよ!?」
「いいから答えてよ。今、あなたがその人の所にいったら、あなたが帰ってくる頃には私はこの世にはいるのかしら?」
「・・・頭大丈夫かよ」俊也は唖然となりながらいった。
「私は正気よ」鈴華は意外と強気でいった。
「・・・どうかしているよ。人の命がかかっているんだよ」俊也は内心めんどくさいけれど、冷静になりいった。
「じゃあ、私の命は!?」鈴華はどこまでも食い下がって俊也が愛那の所に行こうとすることを足枷のように時間を止めているかのようだった。足枷をくらって30分が経った頃には俊也は時計をみるとそろそろ終電が近づいていることに気がつき、鈴華の執拗な足止めをいらいらしていた。
(最高に面倒くさい・・) 俊也の苛立ちがピークに達していた。
「あなたがもし、その人の所にいったなら私はもうこの世にはいないのかも・・!」鈴華はこの言葉を幾度となくオウムがえしを🦜していた。
「その人を救えたとしても私の命は救えないのかも・・」
「・・・じゃあ、死ねば・・」俊也はいつまでも同じ事を繰り返している鈴華に終電が近くなっていて苛立ちが隠せなくなっていたとき、思わずつぶやいた。
「えっ!?」鈴華は内心動揺していたのだろうか?めんくらったかのように動揺するような目を俊也にむけた。
「・・今・・」鈴華は信じられないといわんばかりで俊也をみていた。

p.s
本日は「心は風の中」の2回目が配信されます。
一回目のアーカイブをぜひ聴いてみて下さい♫