警察病院の中で、酸素ボンベをつけながら、手術台に添田は横たわっていた。
「心肺停止!」医師は看護婦にいった。心肺停止で、必死に蘇生のための応急処置を施した。医師は心臓マッサージを施した。添田はうっすら目を覚ました。
ぼんやりぼやけていた添田の焦点がうっすらと医師の方にむいた。
「わかるか?意識が戻ったのか?」医師の問いかけに添田は虚ろな目を向けると、小さく手が動いた。
「なんだ?何かいいたいことがあるのか?」医師は添田の意向を少しでも汲み取ろうと身体を擦り寄せて耳を傾けた。
「あ、あ、ゆ、ゆうと・・謝って・・・悪かった・・・。ごめん」添田はそれだけをいうと、意識を失った。医師たちは慌てて再び蘇生処置を施してみるものの、添田の意識はもう永遠に戻ることはなかった。
原島その部下は呆然としながら添田が息を引き取る様子を窓越しにみていた。
「これじゃあ、被疑者が死んでしまったら、あの子の事件がうやむやになってしまいますね!」原嶋の後輩の桑名がいうと、原嶋は放心したようにみていた。
「嘘だろ・・・何を知ってしまったというのか?」原嶋は思わず悠人の携帯に電話をした。
悠人は原嶋刑事からの電話で添田の死を知らされ、呆然となった。悠人は慌てて××警察署に向かった。
原嶋は事件を唯一解明できる容疑者が亡くなり、詩織が刺された理由がこれで闇に葬られたことを思うとせつない気持ちになった。
警察病院の廊下のソファーにがっくりと腰をかけていた。悠人が慌てて警察病院の中に入ると原嶋刑事は肩を落としていた。
「どういうことですか?」
「どうもこうもないよ!!留置所で自殺を図ったんだ!発見されたときは心肺停止状態だったそうだ」原嶋は悲壮感を滲ませながらいった。
「何でなんだ?」悠人も信じられないといった具合にいった。
「父親に接見した時に、かなり取り乱していたようで、その後にすぐに自殺をはかったみたいだ。何か強いショックなことでもあったのではないか?って言っていた」原嶋はそういうと手で目を覆っていると看守がやってきた。
「何で?ひょっとして真実を知ってしまったのか?」悠人はポツリと呟いて放心したようにソファーにしゃがみこんだ。
「クラタ・・ユウトさん」別の警察署のものが悠人の前に立ち止まった。
「あぁ、はい・・・」悠人は顔を上げると一通の封筒を差し出された。茶色の何も書いていない封筒を差し出され、いまいちよくわからずにいた。
「・・・?」
「おまえに宛てた手紙だ。亡くなった添田からのメッセージだ。留置所のテーブルの下にあったそうだ」看守は受け取るように渡すと悠人はしぶしぶと受け取った。
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