「フミコっていうんだ。なんかすごく古風な名前だね。
アツシは文香の顔をじっーと見つめていた。
「なんかあったからここに来たんだろ?彼氏にふられたとかさ」アツシは文香の顔を覗き込むようにいった。
「そうかも」
「じゃあ、これを飲んだら少し気を紛らわせる?」アツシはそういうとグラスにウイスキーを注ぐと文香に差し出した。差し出されたグラスを文香はじっーと眺めていたが、思いたつようにウイスキーを一気飲みをした。
「おぉ、すごいじゃん、意外とやるじゃん。君を泣かせた男のことなんてとっと忘れちゃいなよ」アツシほそういって文香のグラスに少し打ちくだけたような表情(かお)を向けながら、ウイスキーを注いだ。注がれたウイスキーを文香は更にグイグイともう一杯飲み干した。意外な飲みっぷりにあってアツシは少し驚いたように呆気にとられたように文香を見つめた。
「君、すごいよ。いいのみっぷり。やっぱりさ、失恋を癒すのは酒と男だよ。男の傷を癒すのは男でしかないのさ」アツシはそういうと文香のグラスにドボドボとウイスキーを注いだ。
ベロベロに酔い潰れた文香の肩を肩代わりしながら、歩いていた。文香は気持ちが悪くなり、いてもたってもいられなくなり、思わずしゃがみこんだ。
「ううっ」文香は吐きそうになり、しゃがみ込んだ。
「大丈夫?」アツシはそういいながら文香の肩をさすりながら、自販機から水を買ってきて、ペットボトルを開けると文香に手渡した。手渡されたペットボトルを文香は遠慮なくゴクゴクと飲んだ。
「君、案外強そうだよね」アツシの言葉を無視して、文香は地面に向かって肩で息をしていた。
「さっ、行こう」アツシは文香の肩を抱えあげた。文香もアツシにひきずられるままノロノロと歩き出した。
「そうですね、碧名さんはもうかれこれ20年以上前の生徒さんでしたけれどもねぇ」もう歳のこう50歳は超えるであろう、竹下茂登子は悠人にお茶を差し出しながらいった。
「どんな情報でも構わないんです」
悠人は懇願するようにいった。
「どんな子・・」茂登子は首を傾げながら宙を眺めた。
「ではピアノ教室をやめたんですか?」
「あの子が突然何の連絡なしにこなくなったの」茂登子は淡々といった。