第7部 私の愛まで 第15章 夢の中に佇む女 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
「未歩ちゃーん、こっちよ…はぁ~い、ここまで歩いてきてごらん」奈央子は未歩が小さい頃、ヨチヨチ歩きの映像を奈央子の実家で1人テレビにしがみついてみている。 
「あんなに子煩悩な母親なのに、娘たちをおいてどこかに行くなんて信じられないわ」奈央子の母親、未令は溜め息をついた。 
「私だって信じられないわ。確かに息子のことでは迷惑をかけたけれどでもあの子たちが困らない最低限の生活費を送っていたはずなんですがね…水商売までしていたなんて…信じられないわ!」 百合は仏頂面でいった。
「…水商売?」未令は百合の言葉に絶句した。 
「あの子が…ですか?」 
「本当に息子のことだけなんですかねぇ…?」百合は首を捻るように言った。 
「奈央子さんはどこにいるんですか?」百合は真剣に問いただすように言った。 
「…知らないです…」 
「…知らないって母親よね!?」百合は信じられないというような軽蔑の眼差しを向けた。未令は少したじろいだ。 
「…奈央子は私を憎んでいます。だから私には一切頼ってこないのかもしれません」 
「…憎む?」 百合は反問した。 
「奈央子は実の娘ですが…私が育てた訳じゃないんです。訳があって親戚に育てられたんです。そのことで私を恨んでいるのですよ…」 
「…父親は?事故で亡くなったとしか聞いてないけれど…」 
「…えぇ、私も別居していたので詳しくはわからないのですが不慮の事故でなくなったようです。私があの子と同居したのはあの子が嫁ぐ1年前なんですよ。私とはほとんど口を聞くことはありませんでした。嫁いだあとも一年に一度たまに荷物を置きにくる位でね!その時にあのビデオも一緒に置いて行ったのよ」 
「…複雑な家庭環境なのは知ってたけれど…なんでわざわざあのビデオを置いて行ったのかしら?…おかしな嫁よね…」 
「…あの子は父親が大好きみたいですね。父親の形見を常時手放しませんですから…」 
百合と未歩は奈央子の実家のアパートを出ようとした。 
「おばあちゃん、あのビデオ達持って行ってもいい。未歩、おうちでみたいから…」 
「あの、ビデオ…いいわよ。置いてあるだけで誰もみないから…」未令はそういうと紙袋にホームビデオと記された10本のビデオを入れると未歩に差し出した。 
「ありがとう。おばあちゃん…」未歩は礼を述べた。 
「おばあちゃん…おばあちゃんの名前には『未』という漢字がついてお母さんにも未歩にも『未』がついているよ。きっとおばあちゃんのことお母さん嫌いじゃないよ。嫌いなら同じ漢字をつけたりしないよ。朱理お姉ちゃんにはついていないけれど…」 
「朱理お姉ちゃんはそちらのおじいちゃんがつけたのよ…そんなことより今日は来てくれてありがとう…またいらっしゃい…」未令は小さくお辞儀をした。 
「何か連絡があったらすぐに私達のところに遠慮なく下さい!」 
「はい…連絡があったらすぐにそちらにもご連絡させていただくわ!」未礼は遠慮がちに頷いた。 
「奈央子さんは昔から謎めいた人だった。水商売する理由は到底見つからないわ。他に男がいるとしか思えないわ…」百合は冷たく吐き捨てるように言うと奈央子の実家を後にした。 

続く、、