心配と不安が交錯しながらペンションに掲げてある時計がカチカチと秒針が不安を煽るように鳴っている。
(未歩が無事に家に戻りますように…)両手を組み祈っていると、チリチリチン、チリチリチン、ペンションの電話が希望の音を立てるように鳴り響いた。朱理は慌てて玄関の所にいき勢いよく電話にでた。
「もしもし…未歩?」朱理は相手よりも開口一番に口を開いた。
「…うん、そうだよ?お姉ちゃん?どうしたの?」未歩の声を聞いた途端に腰が抜けそうになった。
「どこにいたのよ!何回も電話したのよ!家にいたの?」
「…あぁ、ちょっと出掛けていたのよ!」
「どこへ行っていたのよ!こんな遅くまで…」
「…うん、ちょっとね。大したことないわよ!」未歩は言葉を濁した。そのことが朱理の心配を余計にかき立てた。
「大したことないってどこにいたのよ!?」朱理は未歩の秘密を懸命に暴こうとしたが未歩もなかなか口を割らなかった。
「大丈夫よ!何でもないから、軽井沢のおばちゃんによろしくねっ!」未歩は明るくいうと未歩から電話を切った。
「未歩…」
ツー、ツー、ツー
「はぁ~…」朱理は電話口でため息をついた。
「未歩はお家にいたの?」いつの間にか百合が後ろに来ていた。
「うん、大丈夫みたい」未歩も安堵したような笑みを浮かべた。
「良かった、良かった。早く寝なさい」百合も肩をなでおろすように頷いた。朱理は寝室に戻り布団の中に入った。朱理は天井を見つめながら未歩が何を秘密にしようとしているのかを考えてみても思い浮かばない。
「はぁ~…」朱理は天井に深いため息を吐き出してみた。わからないこと、不可解なことだらけのような気がした。家族のことだってわかっているようで何もわかっていなかったことに気がついた。
(家族のことなのになーにも知らないなんて…)お母さんもよくわからないままいなくなったし、今度は妹までも私に隠し事をしようとしている 。家族のことさえわからないのに、不思議なことまでも起こるようになった。
(どうなっているの?どうなっているの?)
朱理には家族の一人一人が目には見えない深い闇を抱え込んでいるように思えてきた。父親の抱え込んでいる心の闇、母親の秘密、噂にもなっている祖父の過去、そして妹の不可解な行動、朱理は何だか取り残されたように孤独に包まれて行った。
(みんなどうなっているの?みんなはどうして背中を向けて私から離れてゆくの?)私の知っている家族はみんな優しくて親切であんなに仲が良かったのに…
見せかけだけの家族、虚構…それが今表面的に表だってきただけだとでもいうのだろうか?