第5部 遠い風  第2章「ラピスラズリへの祈り」 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

さつきは地元のジュエリーショップ「ジュエリー ブルーバード」にバイトに繰り出していた。あくびをかみ殺していた。レジの横の椅子に座りあくびをかみ殺して誰もいないことをよそに胡座をかいていた。そこに思いもよらない客が訪れた。自動扉が開いた時さつきは慌てて立ち上がった。
「いらっしゃいませ」慌てて頭を下げた。
「いらっしゃいましたわ」隆裕はシナっぽく小さくウインクをした。
「あなた・・・!昨日の・・何で」さつきは愕然としている。
「あや、やだ、うそ~!?偶然!!」
「・・・・・」
「偶然よ!今日は愛する人にプレゼントを買いにきたのよ。ここの近くに住んでいるけれどね、お店を覗いて見たくなったのよ。それにしてもこんな偶然が世の中にはあるのね~」
「知り合いなの?」隆裕の隣のゲイっぽい男は問いかけた。
「昨日ね、郵便局で知り合ったのよね?」
「勝手に話しかけてきただけじゃない」いきなり知り合ったと言われてさつきはつれなく答えた。
「ステキなお店ね」
「つけてきたの?」
「やぁね・・・そんなストーカーなこと、同性のあなたにする訳ないじゃない!」
「同性・・・?」さつきはポツリ言葉を反芻してみた。
(完全にカミングアウトしているじゃない?!こわ・・・い)
「そんな怖い顔しないでよ。だれも同性のあなたを襲ったりしないわよ、それとも私の顔に何かついてるの?」
「何、買いにきたのよ!」さつきは冷たく言い放った。
「本命へのプレゼントを親友のミッチーと買いに来たのよ!ね~ミッチー」恐ろしいほどのハイテンションでとなりの男に大げさに頭を振ってみせた。
「あなたも・・ゲイ?」さつきはかろうじて言葉を添えた。
「違うよ、僕は隆裕のボーイフレンド!」
「ボーイフレンド?」常識を越えた範囲外の世界にさつきは呆気にとられている。
「そんなことより今日は最愛の人にプレゼントを買いにきたのよ!ロレックス!・・・ロレックスぅ・・・」隆裕とミッチーと呼ばれる男は仲睦まじくショーケースの中を見ている。


君と自分の抱えている社会への失望、孤独、愛情への枯渇、同じ苦しみを抱えていたなんてまだ私は気づく術はなかった・・・


さつきは二人を異様な眼差しで見つめていた。後ろからお局の関田晴美がそんなさつきを後ろからげきを飛ばした。
「何ぼーっとつったってんのよ!ちゃんと案内しなさいよ!」
さつきは晴美の言葉をシカトする。
「その態度は何よ!素直にハイって言えないの?何やっても駄目よね」勝ち誇ったように睨みつけるように嫌みのように言葉をさつきに投げかけてくる。
「お言葉を返すようですけど、ここは仮にもお店ですよ。客のいる前でそういう威圧的な態度はやめて下さい」さつきは目はきっとなりながらも負けずに言い返した。
「仕事もろくにしていないあんたに言われたくないわ!」腕を組みながら見下したような笑いを浮かべながら晴美は言った。
 さつきはカウンターから出て店のバックヤードに引っ込んだ。その様子を隆裕はショーケースをみながら横目でチラチラとさつきと対立する晴美を見ていた。さつきの背中を目で追っていた。

 


藤沢可穂は高級マンションに住んでいるセレブな主婦でもあった。部屋にまつられている高価なシャンデリアや電化製品たち。可穂は黙々と掃除機をかけていた。リビングを掃除機かけ終わると夫・藤沢真人の部屋に入り掃除機をかけ始めた。可穂は壁にかかっているスーツを凝視した。可穂はスーツの上着のポケットの内側に匂いを嗅ぐ。可穂の顔が強ばった。香水の匂いがする。
「絶対・・・許さない・・アイツ・・・」

                                                  つづく、、