夜の通り道を千広はテクテク歩いている。
夜風が心地よく髪を撫でながら吹き抜ける。
<プルルー、プルルー>千広は鞄から携帯電話を取り出すとデスプレーを見ると<昌井佳美>と表示されている。千広が電話に出ると佳美に穏やかな声が聞こえてくる。
「千広ちゃん、いま、こっちからかけ直すからちょっと待ってて」佳美はそういい残すと折り返しすぐに電話がかかってきた。
「千広ちゃん今から事務所に来れる?」淡々とした声から何か期待のようなものが取れる。
「こないだちょっと話したVシネマの映画の件考えてくれた?」今日の佳美は機嫌がいいらしい。
「あぁ、、、竹内さんがヘルプで作る映画よ。あなたもバイト暮らしでお金がないんでしょ。ここで稼がないと一寸先は闇じゃない」
胸の中の図星を指されちくりと痛む千広。
「そうですね。昌井さんって何だか親みたい」
「まぁね。私もあなたと同じくらいの娘と息子がいるからね」いつもなら手際よく事務的に話す佳美が心持、いたわりの情を感じてしまうのは気のせいだろうか。
「バイト探してもまとまったお金を稼ぐって能無しの私にはないわ」
「千広ちゃんはちょっと堪え性がないから集団の中では浮いちゃうんでしょ」
「何でもお見通しですね。お母さんみたい。本当のお母さんより」
「2年もあなたをみているからね。大体わかるわ。バイトとこの仕事を掛け持ちすればいいじゃない。なんなら時給800円でうちで事務のバイトする?」
「そうしようかな。引っ越そうかな」不安気な千広。
「千広ちゃん竹内さんはどうなの?」佳美の何気ない問いかけは鋭く胸をえぐった。
「千広ちゃんさぁ、竹内さんのこと利用されているとか打算なんだとか言ったんだって?」
「話筒抜けね・・・」呆れる千広。
「あなたを騙そうとか陥れてやろうとか利用しようとか思っていたら、あなたを心配したりしないよ。都合よく使ってあとは知らん顔よ。竹内さんの気持ちだけは疑ってはいけないと思うわ」
「でも未来はないですから」
「くっつくとかくっつかないとかそんな世間体なんかどうでもいいじゃない。あなたと竹内さん、2人には2人の独自の関係があってもいいじゃない。周りがどうみていようと支え合えたらいいじゃない」佳美は諭すように言った
「昌井さんだって結婚しているに不純な交際を容認できるの?昌井さんは絶対不倫なんかしない、賢い人なのに」
「私だってそこまで頭固くないの。世の中にはいろんな人がいるから。千広ちゃんが勘違いしているようだったから修正したかったの」佳美はクスクス笑った。
つづく、、、