そいつは2年前の春、大学のクラスで出会い、なんと帰る場所が同じだった。富山出身の6つ上。おれの言葉では二回り上。腰の低い、社交的だが内に問題を溜めて一人で発散しているアクティブだかネガティブだかよく分からん人。ってかおれはネガティブだって知ってるんだけど。。。だからってわけじゃないけど彼とはかなり仲良しこよしになってしもうた。
寮の中でもその人とゆかりのある二人で外に食いに行くから一緒に来いと。こないと放置プレイだぞと。
おれはようやく頭から考える力を奪ったところだった。。。放置プレイを望んだ。それが最も傷を拡げないための、自分に出来る無為であった。
最近は日が落ちるのが早い。今日気付いたことじゃあないけれど、今日ほど実にしみて感じた日はなかった。
――――――それからの記憶はあまりない。―――――――
寝てたからなのか、ただ黒いだけの空を見ていただけなのか、すぐ横のコンクリを見ていただけなのか。何か考えていたのか、何かを考えないように心を失くしていたからなのか、自分にはもう決定する証拠がない。
今唯一思い出せることといえば、クッションを腹に引いただけだと風邪を引くのかなあという心配と、でもどうせ風邪引いたって明日の学校休めばいいだけでしょっていう思い。そしてどうせこのまま風邪が悪化して取り返しつかなくなってもおれは納得できる、それが目標を自ら手放した愚かな人間の末路だという思いであった。
死んだところでそれが何? 明日からの必修に行かなかったからってそれが何?
ふっと気が付くと寮生がずいぶん返ってきたんだなと思った。屋上は風の音しか聞こえない。部屋の電気は見えないけれど、耳障りな奇声があっちこっちから飛んできていた。体は程よく冷気に晒され、体内は恒常性を維持するために活発になっていた。
。。。。。。。。。。。。どうしようかなぁ。。。。。。。。。。。。。。。。。。
考えが頭の中に生まれなかった。そのままでいいや。またぞろごろ寝。
いつまでもこうしていたい。だけどそんなこと結局できない。ここは寮。そんな自由さえも奪われる場所。
一時間ほど経った。そろそろあいつらも帰ってくるだろう。だやいだやいだやい。
新聞を全部ポケットに詰め込め、屋上から枕とクッションを投げると、恐怖心を置いて、手すりを伝って降りた。電気は付けず、布団を敷くと悲しいくらいに力を込めて、拾った枕を投げつけた。
ぼーっとし、突然頭痛が襲うと、いつもとは違う発作が始まった。
次には頭を枕にこれ以上ないくらいに強く押し当てていた。首がひん曲がろうと、知ったこっちゃなかった。
どうしておれを選んでくれないの?
どうして一緒にいてくれないの? 相手のどこがいいの? 何が劣ってるの?
絶対に幸せにするよ。絶対に楽しいよ。どこ行くの。一緒に歩こうよ。
行かないでよ。助けてよ。せっかく決意したのに、次の日にお別れ言うなんてずるいよ。一人だけ幸せになってずるいよ。
死にそうだよ。死にたいよ。
どうして戻ってこないの? ごめんよ悪かったから、謝るから、もう絶対にしないから、本気で幸せに出来るんだよ。
こっちを見てよ。無視しないでよ。おれはもう君のどこにもいないって言うの?
あんなに楽しく過ごしていたのに、詐欺だよ。だましだよ。訳わかんないよ。
―――不安障害なのか、統合失調なのか、足して2で割ったような状態だった
ごめんよ、悪かったよ。謝るよ。ゆるして。こわいよ。助けてよ。こっち見ても。戻ってきてよ。もう悪いことしないよ。信じてよ。ねぇ、どうして。どうして急に嫌いになるの。ごめんよ。たすけてよ。
どうしてこんなにつらいの。誰か助けてよ。みんなこんなにつらいの。父さん。どこにいるの。何してるの。教えてよ。おれのことなんかどうでもいいの。もう何とも思ってないの。思い出さないの。おれはいつだってだよ。迎えに着てよ。たまには会いに着てよ。ひどいよ。父さん。いつもおればかりじゃないか。今どこにいるの。帰ってきてよ。認めてよ。支えてよ。助けてよ。遊ぼうよ。嫌いになっちゃった。ごめんよ。帰ってきてよ。待ってるのに。どうしてこんなにつらいの。教えてよ。わからないよ。死んでしまいたいよ。助けてよ。死んでもいいの。どうするの。どうでもいいの。忘れないでよ。思い出してよ。消えないでよ。。。。。。。。。。
また記憶がない。
今度こそはきっと寝てたんだと思う。一時間以上も口走ってたんだから、頭も体も心も、ぼろぼろで、ずたずたで、くしゃくしゃで、ごみみたいだ。
とりあえず今日来ていた友人に詫びの言葉をメールで送り、傷口が開かないようにまた寝た。頭を強く、叩きつけて。。。