村谷「ビルそのものって・・・まさか!?我々が今いる・・・・・このカジノビルの事ですか!?」
サブ「そうだ、信じられないかもしれないが・・・。」
村谷「いくら何でも無茶苦茶ですよ・・・!?可能なんですか?ビルを倒す・・・・・と言うか傾ける事なんて・・・。」
サブ「・・・・・僕が聞いた話だと、地震等で傾いたビルを土台かた持ち上げ補修するという・・・そんな工事がある事を。」
サブ「傾いたビルを・・・平に出来る工事、その逆をすれば・・・平らなビルを傾ける事だって可能だ。」
村谷「・・・まぁ確かに・・・そうすれば可能ですが・・・。」
サブ「しかし、そうなると・・・・・当然ながら相当大掛かりな土木工事が必要になってくる・・・。」
村谷「確かに!そもそも掘り返さないといけない!どうあれ一度は!・・・・・・・でも、どう振り返ってもそんな様子は微塵もありませんでした。」
サブ「・・・・・・・・・。」
村谷「ウチのビルの周りを掘り返したとか、重機が来たとか・・・それは一度もありません!シャベル1つ入ってない!皆無!一体どうなってるんですか!?」
サブ「・・・それはまだ分からん・・・。」
村谷「分からんって・・・それじゃあ・・・。」
サブ「どんな手を使ったか分からないが・・・奴が傾けたのは事実!その工事クラスの何かで!」
村谷「・・・・・。」
その様子を見て・・・立原達は少しほくそ笑んだ。
立原『かなり焦ってきてるな・・・という事は、さすがに気付き始めたか?敵もこの異変に・・・傾斜の逆転に!』
ルーシー『しかし!そこまでね・・・気付きはその結果まで!何故傾いたかは分からない・・・想像の外!』
敦『そもそも、ビルを傾けるというその発想自体が異様!破格で訳の分からない着想!その先・・・! それを具現化する仕掛けに至っては・・・。』
谷崎『更にバカバカしいと言うか、冗談みたいな手!これこそ奇想天外と言える!中島君の発想力は!』
それは、あの時の競馬場での会話で・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カツオ「なるほど・・・ビルを倒すと言うか傾ける!」
中島「そう!」
文「随分と奇想天外な発案ですね、まあ可能と言えば可能ですが。」
中島「いけますか!?」
長谷部「あり得るぞ。」
中島「!?」
長谷部「その気になればビルを傾ける事は可能だ、カツオは以前裏バイトで土木作業のバイトをやってた人間だからある程度は分かっているだろう?」
カツオ「はい・・・倒す事も決して不可能じゃない、しかしそうするには言うまでも無く大掛かりな工事・・・土木工事が必要不可欠!」
藍「そうなれば・・・当然だけど騒音や振動対策が必要だな、どうするつもりだ?」
中島「それは必要ない!」
カツオ「は!?」
ぬえ「必要ないって・・・あんた一体どうするつもりなのさ!?」
中島「天!・・・と言うより地が味方したと言うべきかな?ともかく・・・沈むんですよ、あの辺り。」
今剣「沈むって事は・・・地盤沈下って意味?」
中島「そう!数日前にフラッと入った喫茶店であのカジノの近くのビルが補修工事をしているって話を聞いてそれが・・・・・決定打!まさに値千金の情報!繋がった!これで饕沼攻略の道筋が全て・・・。」
清光「その決定打が地盤沈下って事だね。」
中島「それです!その補修工事は地盤沈下で傾いたビルを元に戻す工事!早い話・・・あの辺り一帯はやわい!地盤が・・・当然あのカジノのビルも・・・ククク・・・。」
安定「でも・・・いくら地盤がやわいと言っても地面は地面だよ?ちょっとやそっとじゃ無理じゃないかな?それに君は普通の人間だし・・・。」
中島「20トン・・・これでどうですか?」
藍「は?どういう事よ?いきなり20トンって・・・。」
中島「20トン・・・・・2万kg・・・・・ビルの片側のみに乗っかったらどうだ?」
文「なるほど!そうすればじわじわと片側が沈んでいく!決して不可能じゃないです!」
でも、ここで問題が・・・。
それをどうやって実現するかだ・・・20トンはあまりにも非現実的すぎる・・・。
カツオ「それって、10kgの土嚢が2000個必要って事だよ!?エレベーターで運ぶにしろ階段を使うにしろ労力はバカにならない!それに時間も!そんな作業を敵が気が付かないと言う保証は無い!」
中島「土嚢は使わないよ。」
安定「え?じゃあ何を・・・?」
中島「・・・水だ!」
「水!?」
長谷部「・・・なるほど!水ならば部屋にある蛇口を捻ればいくらでも出すことが出来るからそれを使った方が寧ろ効率が良い。」
中島「それに、あのビルはほぼガラガラの空き部屋がいくつもある・・・・・その空き部屋の傾けたい側に位置する部屋を借りて、並べるんだ・・・20個・・・1立方メートルのビニールの水槽20個を!!!」
ぬえ「そうか!!!ビニールの水槽なら段ボールの箱とかに畳んで入れて引っ越し業者を装ってその部屋に運び入れれば怪しまれない!」
清光「確かに、引っ越し業者を装えば20個や30個の段ボール箱が運ばれても誰も気にしないし不審がられる事もない。」
中島「それを部屋に持ち込んだら、それを傾けたい側に水槽を並べて水を満タンになるまで入れる・・・部屋の水道を総動員させれば20個の水槽は・・・8時間もあれば一杯になる!8時間ならカジノ側の定例である、1日1回あるルーレットの水平チェックも掻い潜れる・・・結果、人知れず8時間後に・・・!」
中島「並ぶ!!!20個・・・加重20トン!水のサイコロの完成だ!!!!!」
驚くべき!圧倒的アイディア!!!!!
中島「どう?簡単で且つ・・・現実的な話です!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カツオ『本当だ・・・全くもってその通りだ!中島!現実化したんだ・・・ここまでは見事に!!!後は・・・当てるだけだ!当てるだけ!』
中島!全集中!!!
中島「ぐっ・・・!くっ・・・!!くっ・・・!!!!!」
「いけいけー!」
「このままいっちゃえー!!!」
「今日はあるぜ!!!マジで気配が!!!」
「入る入る!吸い込まれるように!!!入っていくぞ!!!」
サブ「くっ・・・!」
「いけ!」
「いけっ!!!」
「いけー!!!!!」
村谷「店長・・・どうです?・・・玉の様子は?」
サブ「まだ分からん・・・分からんが、ともかく今僕が持っているリモコンで操作出来る最大傾斜・・・床、台、クルーン・・・・・それぞれのMAX10・・・合わせて30!3度の手回しはもうした・・・限界!これが今こちらに出来る限界だ・・・MAX!これ以上はない!」
村谷「店長・・・。」
そして!クルーン2段目!」
「来たぞー!!!」
「うっひょー!!!」
中島「よし!徐々に弱まっている・・・後少し!!!」
しかし・・・またもや惜しくもハズレの穴へ・・・。
「うわー!!!惜しい!!!」
ルーシー「当たりに掠って入りそうだったのに・・・!!!」
サブロー・・・もう冷や汗が止まらない・・・。
サブ『何てことだ!!!はずれこそしたものの・・・今の動き!奥 流れ!!!もし手前に傾くか全くの水平ならあんな動きはしない・・・弱まった玉はもっと外側、外れるにしても外側に沿って流れハズれるはずだ・・・つまり・・・・奥傾斜だ!まだ!・・・て事は・・・MAXでもダメ!!!??』
サブ『ぐっ・・・これはまずい!!!こんな状態で3段目まで行ったら・・・またトロトロと・・・ぐっ・・・・・・・!!!ダメだ!それだけは!!!』
村谷「店長!今の動きは・・・!?」
サブ「分かってる!・・・そうだ!」
すると、サブローは持っているリモコンをいきなり操作しだした。
村谷「店長?」
サブ「奴らは、ビルをクルーン側に傾き倒している・・・こんな大技荒業、まさか自在って訳じゃないだろ?」
村谷「は?」
サブ「つまり・・・・・奥に倒したら奥に倒したきり、その傾斜を元に戻したりは出来ないはずだ・・・!」
村谷「た・・・確かに・・・。」
サブ「ならば・・・被せてやる!奥!僕も奥に倒す!」
村谷「え!?」
サブ「僕も奥に倒せば、奴が仕掛けた奥傾斜と重なり、さらに強力な奥傾斜になる・・・そうなれば、手前に当たりのある1段目2段目の通過は更に困難になる!」
村谷「・・・なるほど!」
サブ「これなら上手くいくはずだ。」
でも、まだ不安が残る・・・妙手で名案だが・・・もし万が一、3段目に行った時の対処法はどうするのか?
「・・・・・・・・。」
すると!サブローは{ある事}を思い出した。
サブ「・・・そうだ!あれがあった!」
村谷「え?・・・あれってまさか・・・!?」
サブ「2~3年前に試作した装置があったろ?1度営業前に試しに使ったら・・・その守りがあまりに鉄壁過ぎて逆に露骨で不自然・・・それらが理由で封印した禁じ手とも言えるあの装置・・・。」
村谷「ありましたね・・・確か正式に使わずそのまま・・・。」
サブ「使おう!今それを!」
村谷「え!?しかし・・・事務室か倉庫にあるはずですが・・・何しろ封印の如く片付けたので何処にあるかは・・・。」
サブ「捜せ!何としてでも!今すぐここに!!!」
村谷「は!はい!」
サブ「スタッフ総出だ!」
スタッフ皆「はい!」
あの装置とは・・・。
サブ『あんな失敗作は、出来れば使いたくなかったが・・・この状況下では仕方ない!負けたら破滅だ!躊躇してる場合じゃない!出来る事は全てやる!やれる事は徹底的にやる!そして・・・勝つ!守り切る!あの大当たりだけは必ず!!!』
サブ『勝つ・・・勝つ・・・・・勝つ!!!!!』
サブ『僕は・・・・・敗北するわけにはいかないんだ!!!こんなところで!』
「うわ~!!!惜しい!」
「だがイケる!!!」
サブ『負けられない!ふざけるな・・・躓いてたまるか!!!あんな石ころ同然のガキに!!!』
すると・・・ここで思いもよらない事態が!!!
「おぉ!!!!!クルーンに同時に2発!!!」
「すげー!!!ミラクルじゃねーか!!!」
サブ『な!!!ふざけるな!!!冗談じゃないぞ!!!』
サブ『沈んでたまるか!!!こんな薄暗い沼・・・日の当たらない裏カジノ!』
だが・・・玉は2個共惜しくもハズレの穴へ・・・。
サブ『その店長程度で終わってたまるか!!!積み上げてきたんだ!伊佐坂先生の会社に入って10年・・・下働きからコツコツと・・・時折視察とかに来るR.T.Dの連中・・・特に各バンドのリーダー格とサブリーダー格は僕に対する扱いが酷い・・・頭を
踏むのはまだいいが・・・僕を四つん這いにして椅子替わりにするとか・・・良心的なのも少なくはないのが救いだ・・・・しかし、Messiahの方が全然マシだ!!!嫌な奴は何人かいるが・・・そんな連中にも頭を下げ・・・積み上げてきた!いつかトップになるために!!!』
サブ『耐えた!あの連中の気まぐれに・・・常軌を逸した弄り・・・例えば、女性陣全員の靴から脱ぎたての裸足を浸した赤ワインが入った金タライを一気飲みさせるとか・・・まぁ悪くはなかったが・・・そういうバカげた余興にも嬉々として付き合った・・・何故か?味方になれば好都合だからだ!!!そうすればいろいろチャンスが恵んでくる!そして・・・伊佐坂も!』
サブ『この会社を牛耳るわが社の核心!国内外でもその名を轟かせている・・・僕はそんな伊佐坂社長から特別な寵愛を受けてる若きエース!・・・そうなった暁には必然的に僕も駆け上がる・・・我が社・・・最大手!伊佐坂ホールディングスの10指に入れるのも夢ではない!』
サブ『見えているんだ・・・その、栄光への架け橋のレールは!!!それを・・・消されてたまるか!!!』
サブ『こんな底辺の地点・・・中途半端な出世・・・この程度で・・・この・・・』
「おぉ!!!またクルーンに来たぜー!!!」
「よっしゃー!!!いけいけー!!!」
サブ『よ・・・よせ!・・・・入るな・・・!・・・入るな・・・!!!』
玉は、またハズレへ・・・。
「あぁ~!!!」
「くぅ~!!!惜しい!」
「もう少し・・・あと少し・・・。」
「後ちょっとじゃあないか!!!」
サブ『うっ・・・危な!!!・・・・・今、あのハズレ穴をもしヨロヨロの抜ければ・・・次に向かうは当たり穴・・・。』
サブ『くっ・・・何をしてるんだ村谷は!?グズグズしてると手遅れになる!!!早く!・・・・・早く持ってくるんだ!例の装置を!!!』
すると・・・・・一緒に探しに行っていたスタッフが一旦戻って来た。
どうやら、事務室にも店長室にも見つからなかった様子であり、恐らく倉庫にあるらしい・・・・・。
サブ「え!?」
スタッフ「主任等が向かっているので、我々はもう一度事務室と店長室で引き続き捜索を・・・。」
すると!サブローは怒鳴るように「走れ!」と声を上げた。
スタッフ女「え!?」
サブ「それが分かってるなら何故すぐに行動しない!?走るんだ!!!報告に2人も来る必要はない!走れ!探せ!」
スタッフ「はっ!」
スタッフ女「はっ!」
サブ『・・・ぐっ・・・!!!まずいぞ・・・本当に・・・』
サブ『僕と奴の傾けで・・・今は相当な奥傾斜のはず・・・まだ来るのか!?手前の穴に!?・・・ぐっ・・・!』
サブ『結局・・・不可能って事なのか?・・・・・傾きだけで完全に防ぐのは!?・・・確かに、奥傾斜で手前に行きにくくすることは出来るが・・・来てしまった玉は無意味!外側からその玉が流れ込むように入る事は防げない!!!くそぉ~~~~~~!!!!!!!』
中島「くっ・・・ぐっ・・・おし!また来た!!!」
サブ『嘘だろ!?またクルーンに!??・・・やめろ!!!やめろぉ~~~~~!!!!!!!』
サブ『僕は・・・こんな地位で終わる訳にはいかないんだ!!!僕は・・・終われない!!!どうせなら・・・お前だ!中島ひろし!』
サブ『お前なら別にいいだろ?単なるギャンブル中毒だしまだ子供だ!やり直しが効く!ここで終わっても借金残って地下に戻るだけ・・・そんな未来でも別にいいだろ!どうせロクでもない未来だろ!?』
玉は・・・またハズレ・・・・・。
「あぁ~!!!」
「惜しい!!!」
サブ『消えろ・・・消えてくれ!!!だったらお前が消えてくれ!!!僕は・・・見返さなきゃならないんだ!!!かつて、僕を見下してた友人の皮を被ったバカ共!!!』
サブ『その不遜な勘違い・傲慢を・・正さなきゃいけない!!!解かなきゃいけないんだ!!!奴らの・・・僕に対するバカげた誤解、思い込みを・・・知らしめるんだ!!!』
サブ『どちらが虚仮で・・・どちらが本当は・・・浅墓・・・程度が低いか・・・証明!証明しなきゃいけない!!!』
それは・・・・・・今から4~5年前くらいの事だった・・・・・。
まだ下働きだったサブロー・・・買い出しを頼まれカジノに戻る途中・・・中学時代の友人3人と偶然会った。
馬渡(まと)「サブローじゃないか!?」
サブ「あれ?・・・・・ひょっとして馬渡!?それに石田と浅川!?」
石田「久しぶりだなー!」
浅川「中学以来か?」
懐かしさもあり、近くのファミレスへ・・・。
馬渡「え!?カジノに勤めてるのか!?」
サブロー「あぁ、これが結構良いんだよ。」
馬渡「でも、アミューズメントクラブって奴だろ?はぁ~~~?お前・・・そこしか行くとこなかったのかよ?三河屋さんを経て行き着く場所はカジノかよ・・・。」
浅川「え?」
馬渡「あれだけ勉強出来たのにお前・・・やっぱ最低でも高卒じゃないと厳しいか?・・・大卒なら尚更良いぞ!」
石田「ばっ!・・・お前よせよ!!!」
サブ「しょうがないよ、早く働きたかったんだからさー、それに今勤めてる所は高収入だから問題無いよ~。」
石田「そ・・・そうか。」
サブ「因みに、これくらいもらってるよ。」
持っているメモ用紙に一か月分の給料の額を書くと・・・3人とも驚きを隠せなかった!
馬渡「うわ!!!マジかよ!?」
浅川「おいおい!叙々苑とかフレンチとか奢ってくれよー!」
石田「お前は相変わらず調子良いよなー!」
すると、サブローはバッグから何かを取り出しポッケに入れ・・・・・ちょっとトイレと言って席を外した・・・。
そして3人はサブローが見えなくなったのを見てまた会話を・・・。
馬渡「・・・ビミョー!!!落ちぶれてんだか成功してんだか分かんねーなー!」
浅川「でもよー、これだけの額をもらってるんだぜ?やっぱ凄ぇよあいつ!」
石田「だけど・・・カジノって虚業だろ?実態が無いからなぁ・・・。」
馬渡「あーそれもあるなぁ・・・あいつ本当に大丈夫か?」
浅川「やっぱり、もっとしっかりしたとこ入んなきゃなぁ就職はやっぱり。」
馬渡「俺達はその点安心かもな?一部上場の銀行と証券会社内定だし。」
浅川「だな!サブローが高給取りなんだから俺達だってそうならないと示しが付かないもんな!」
石田「そうだそうだ!あいつに負けてられないよな!俺達も勝ち組だって事を証明しなきゃ割に合わないぜ!」
その音声を・・・トイレでサブローはさっき持ってきた盗聴器で聞いていた。
サブ『ふっ・・・・・甘いなお前ら・・・いくら給料を多くもらってもそれだけじゃ意味が無い!実態が無いのはそっちさ。』
加筆更新また後日~!!!