原団地 夏突入 今年も蝉が鳴き始めた。 夏の夕立の後、52棟の脇道を通ると 稀に幼い頃の記憶の薫りに出会うことが出来る。 苔の生した黒濡れの幹から。 微かな風は頬を一撫でし、不意に去っていく。 私は追憶に見た薫りを探して回るが、 もうそれは見つからない。