胚培養液について | 医療法人社団 晴晃会 育良クリニック

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中目黒アトラスタワーにある産科・婦人科・生殖医療科の病院です。
病院のお知らせなどを載せていきます。

みなさん、こんにちは。生殖医療培養部です。

今回は生殖補助医療である体外受精に関わる

重要な培養液についてお話します。

 

通常、排卵された卵子は卵管内で精子と受精し胚となり、

卵管内と子宮内で過ごします。

しかし、生殖補助医療である体外受精後を行った胚は、

卵管や子宮に似た環境で過ごします。

その子宮や卵管に似た環境というのが、培養液です。

体内環境とは異なるストレスを受けるため、

それを最小限に抑えられるかが重要となります。

 

培養液には胚の成長に必要な、乳酸・ピルビン酸・グルコースなどの

栄養素がたくさん含まれています。

 

 主に2種類の培養液があります。

【シーケンシャルメディウム(two-step型)】

・受精から3日目まで使用する培養液と3日目から6日目まで使用する培養液が異なる

・発生段階に応じて必要な栄養素が異なるため、発生段階に応じた栄養素の供給

・培養液を交換する際に胚へストレス(pH・温度・湿度など)が考えられる

 

【シングルメディウム(one-step型)】

・受精から6日目まで同じ培養液を使用

・胚自ら必要な栄養素を選択して吸収するという考えから開発

・培養液の交換がないため胚へのストレス減少

・胚が成長していく過程での、老廃物やアンモニアなどの分解産物の蓄積が考えられる

 

ご紹介させていただいた2種類の培養液間に、

受精率や胚発生率に差はないとされています。

施設ごとの運用にあった培養液の選択が推奨されています。

当院ではタイムラプスインキュベーターという、

カメラが内蔵されたインキュベーターを使用しています。

受精後、専用のディッシュに移したら、その後の胚の培養・観察は

一度も外に出すことがありません。

そのため、シングルメディウムを使用しています。

しかし、胚によって培養液にも相性があるとされているため、

その際はシーケンシャルメディウムとの併用や

変更を検討する必要があると考えています。

採卵後の体外受精や顕微授精、また胚培養など

患者様の見えない部分が多いかと思います。

そのため、このような形でご紹介させていただきました。

 

今後も培養部から、少しでも患者様のためになる情報など

発信できたらと思います。