10分くらいコロコロしたでしょうか。
先生がとらの手を開き・・・「どう?出てきた?」
「え?何ですか?何が出てくるんですか?」
「虫。」
「虫!?」
もうびっくりしました。
先生は虫めがねを出してとらの手にあてます。
「指の付け根の所から白いほそーいのがにょろにょろっと出てくるでしょ?」
実際・・・分かりませんでした。
確かに手に細い糸のようなものは無数に見えましたが、
それが埃にも見えます。
でも、とにかく信じることにして、埃っぽい虫を必死にみつめていました。
「・・・」
「線より細いよ。よーく見て。」
「うーん、見えるような見えないような・・・ところで先生、何の虫ですか?」
「癇の虫だよ」
「!!癇の虫って、本当の虫なんですか???」
私が凄い勢いで聞くと先生は無言で笑みを浮かべました。
その笑みが、どや顔にも恥じらいの笑みにもとれたのですが、
何だか夢の中にいるようで、深くは質問しませんでした。
先生はとらの手を丁寧に丁寧に拭って診察は終了しました。
「今日あまり出なかったから、お家で同じことをやってね。
虫が戻っちゃうから、最後に手は綺麗に洗ってね。」
「先生、お塩はどうすれば」
「何でもいいよ。普通の塩で」
パワースポットとかで採掘されたお塩とかでないのですね。
一週間くらいしてコロコロしなくなっていました。
とらの夜泣きが気にならなくなったのです。
癇の虫退治ができたのか、夜泣きが一時的なものであったのか
いまだにわかりません。
その時は気づきませんでしたが、とらの夜泣きが始まった頃、
お腹に赤ちゃんが出来ていました。
「癇の虫って本当の虫って知ってた!?」と周りに聞いても
誰も「何言ってるの。」と相手にしてくれません。
昆虫図鑑に「癇の虫」って載っているのでしょうか?
でも、白くて見えない位細すぎて、図鑑には不向きです。
未だに半信半疑ですが、夜泣きからは解放されたので
私は信じようと思います。
とらまま