「死神」ときて次は天使天使


生前の大罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が、天使業界の抽選に当たり、再挑戦のチャンスを得た。

自殺を図った中3の少年・小林真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。

真として過ごすうち、ぼくは人間の美点や欠点が見えてくるようになる。



これ、少し前の作品みたいだけど、すごく良かった!
自殺しようとした少年には、それなりに思い詰める理由があったんだけど、重くなりすぎず、どこかほんわかとした雰囲気を失わずに、主人公の「ぼく」こと真くんの心の変遷が描かれていく。
なんか「ぼく」の魂がかわいくてねえ…

嫌なことや汚いことを聞いたり見たりして、怒りが湧いたり人を軽蔑したり、そんな感情もあるけど、それだけじゃなかった。
しゅんとしたり、とぼとぼと帰ったり、友だちができて嬉しかったり、知らなかったことを知って驚いたり。
私には「ぼく」のそんな姿が、とてもピュアに思えたのだ。

自殺前の小林真が何を思っていたのか、知っていくうちに、「遅すぎたんじゃない、(見切るのが)早すぎたんだ」「こんなに大切に思われていることを本物の真に聞かせたい」と心の底から思う「ぼく」。

自分だけが不幸の底にいるかのような思い込みや拗ねを捨てて、一歩引いてみたり、違う角度から見てみたり、その人の視点で見てみたり、そんな成長の結果として「この大変な世界では誰だって同等に傷物なのだ」と気づく。
そして優しさを得ていくんだね。

「どうせ無駄」なんてセリフを吐いたりせずに、思ったことを言ってみるようになったり。
そんな全ての変化が「ぼく」の成長だったし、それを見ていて眩しかった。


長くても1年程度と決まっているホームステイの期間が終わる時、真くんの生還を泣いて喜んでくれた家族は、また喪失の悲しみを味わうのか…
その時「ぼく」も、真くんの世界で初めて味わった喜びを捨てなければならないのか…
そう想像すると、私は辛い気持ちになっていた。

そんな未来を救う結末は、ちょいと予想通りだったけど、前より少し強く前向きになっている心を、後押ししてくれるいい結末だった。
あ〜、心が洗われるとはこのことだよ…

この本を読めてよかった!
「ぼく」の魂に幸あれおねがい 私も幸せです。