石川県をはじめ被災地の皆様に心からお見舞い申し上げます。




お正月と言えば箱根駅伝、ということで、2024年最初の本はこれ。


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箱根駅伝では、出場を逃した大学の中から、予選で好タイムを出した選手で混成チーム「学連選抜」が作られ出場のチャンスが与えられる。

いわば敗者の寄せ集めであるメンバーは、何のために襷をつなぐのか。

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箱根駅伝のお話は、以前「風が強く吹いている」を読んだ。

シード校になれず予選会でも負けて出場かなわず、一度は夢破れた人たちの挑戦。

今回のが違うところは、メンバーが同じ大学の仲間ですらないということ。


10位以内に入らないと、その大学は来年のシード権が失われてしまうのだが、駅伝はチームプレーであるため、個人として優れた選手がいても駅伝で勝つことはできないという難しさがある。


その救済か、レースに出られない大学でも、予選会でタイムがよかった個人は、敗者復活戦のように「学連選抜」チームとして走れるという決まりがあるのだ。

(※今回からは廃止されているようですね)


この作品は、「学連選抜」チームとなった城南大学の浦 大地と、彼を中心として朝倉、門脇、山城といった各大学からのメンバーたちが、箱根駅伝を前にしてそれぞれの葛藤と向き合い、本番のレースを経て自分なりの答えを掴んでいくストーリー。


本番までにチームとしてまとまろうと、キャプテンに指名された浦くんは努力するのだが、孤高の天才走者・山城が全然歩み寄ってくれなかったり、メンバーそれぞれの温度差の違いに苦労する。

そんなことを乗り越えての本番。
なんだかんだスカしていた彼らだったが、それぞれに心を動かされるきっかけがあり、本番で激走する姿には思わず熱いものが込み上げてくるのだった。

私は門脇のストーリーが好きだったな。
強豪校じゃないし自分も強くないと諦めていたが、心の奥底に眠る熱意が、適所を得て息を吹き返したのだ。
今まで注目されていなかった選手が、箱根で「こんなすごいランナーがいたのか!」と見出されて、卒業後の進路まで影響が…
そんな例は、少し前の青山学院大学でもあったような。

選手だけじゃなく、これが監督生活最後の吉池や、怪我でマネージャーとなったメンバーなどの思いも昇華されていくのが良かった。
寄せ集めでも一時的にでもチームになることができる、そのキモは何なのだろうか。

やはり実際には「学連選抜」チームは上位には入らないことも多いし、これは理想の物語かもしれないけど。
満身創痍になりながら、それでも何故走ろうとするのかといえば、ランナーだから。
彼らは結局、ランナーとして走る場を与えられたら、走らずにはいられないのではないかと思った。
超理性的な天才・山城でさえ、いつの間にかその熱にとらわれている。純粋で熱くて美しい景色。

今年の箱根駅伝も楽しみだ。


★箱根駅伝のテーマ曲は吹奏楽曲には珍しい、久石譲さん作曲。このアルバムにしか収録してないようです。☟
吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》