街に蔓延し始めた謎の眠り病。その原因が旧市街にあるのではと考えたカトリと友人のリズは、眠り病の原因を突き止めるため、2人で調査を始める。
舞台は19世紀のスコットランド、エディンバラ。
主人公のカトリは、低所得〜貧民層が多く住む旧市街の金物屋の養子で、子どもたちのリーダー格、商売柄大人から子どもまで顔が広い。
友人になったリズは、エディンバラの新市街に家がある富裕層の子で、賢いがストレートにものを言う性格で友達がいない。
カトリとリズ、正反対なタイプの女の子が、共通の目的のために協力しあって真実を突き止める物語。
新市街と旧市街は隔てられていないものの行き来することもあまりなく、通常なら出会うことはなかっただろう2人だが、互いの家族が「眠り病」という謎の病気にかかったことをきっかけに結びついた。
調査の結果、いくつかの発生条件はわかったものの、病の原因を突き止めるまではいかず、調査のタイムリミットを迎えるかと思われたが…
謎の解明の鍵は、エディンバラの街の歴史に関わるものだったところが面白い。
なかなか残虐だなと思える歴史が本当にあったのか、このお話のための創作なのかはわからないが、著者がエディンバラ大学を卒業されているそうなので、本当にそういう類の伝説を現地で耳にしたことがあるのかもしれない。
ミステリアスな街の歴史と絡んで、古代神まで出てきて謎めいた展開になり、なんとなくクトゥルフ神話をイメージした。
クトゥルフは太古の異形の神である。邪悪な古代神が甦ろうとしているオカルトな話(創作)がクトゥルフ神話である。そのエッセンスが盛り込まれているように感じたのだが。
この物語に出てくる異形神は…なんかツチノコ…⁈…怖くない…⁈…私からしてみたらむしろ可愛くないか…⁈
…というハシゴを外された感は(勝手に)あったが、児童文学だし怖さを減量したのかも。それよりも不思議な伝説が息づいている古のイングランド周辺の匂いを味わえた気がして良かった。
当時、富裕層でもなく女の子なら特に、人生が選べるなんてありえなかった。そう思って諦めていたカトリの賢さや興味を見逃さず、道を拓こうとしてくれる大人たちがいたのがいい。彼女が将来への展望を持ちながら自分で道を切り拓こうとするところに、逞しさと希望を感じた。
古代の歴史を絡めた面白い発想の物語で楽しめた!
これをきっかけに歴史探訪の面白さに目覚める子がいるかもしれない。いたらいいなぁ。