元は「小説家になろう」サイトに掲載されていた小説のコミック版。
書籍版も出ています。

元は序章から終章まで合わせると10章もある物語ですが、コミックはまだ序盤でした。

中世のような世界観のファンタジー。
何というか、時代小説で言ったら池波正太郎っぽい雰囲気…
「剣客商売」みたいなイメージに近いかも?
あるいは西部劇?

webの方も読みましたが、落ち着いていて、かつ飄々とした語り口にどことなく可笑しみも感じるような、味のある作品です。

老いたとはいえ不敗と言われる強い騎士、バルド・ローエンの死に場所を探す旅。
とはいっても悲壮感はなく、
胸がすくような戦いのエピソードと美味しそうな食べ物に心惹かれる冒険物語です。

主人公58歳が老人と表現されてしまうことにはいささか異議あり…とはいうものの、
若くも美形でもなく活躍盛りを過ぎた年齢の主人公というのも珍しいでしょう。
ただし今もとても強くてカッコイイです。

事情があって主君と国を去り、死に場所を探すあてのない旅であった筈が、
騎士の誓いを果たし、美味しい食事を堪能することにいつも全力でいるうちに、
いつの間にか一生懸命に生を楽しんでいるではないかと気づく。

死に向けての旅ではなくなっていました。

人生の終盤なのは確かですが、
亡くなった主人との思い出があり、
主人の息子や後輩騎士などは自分を慕ってくれ、立派に育った彼らに後の憂いもないという幸せ。

一人旅は少し寂しい気もするけれど、そういう幸せもあるんだと納得します。

旅の途中で出会ういろいろな好人物たちとの触れ合いも楽しく、孤独感を感じなくなっていきます。

自分より未熟な者を見た時のバルドの情や包容力の深さが、
年齢を重ねたゆえのものだろうことがまたとっても味わい深いです。