公爵家嫡男ヴィンセントは優しく一途で、理想の恋人だった。
当たり前に続くと思われた最愛の恋人との学校生活は、十七歳の春、二人一緒に原因不明の死を迎え唐突に終わりを告げた……はずだった。
気づけば七歳に死に戻っていたオリアナは、今度こそヴィンセントを死なせない決意をする。
「ヴィンス! 会いたかった!」
「人違いだろう」
――たとえ彼が、オリアナのことを綺麗さっぱり忘れていても。


この作品もめちゃくちゃ面白かった。人気があったはずです。沢山のファンアートを捧げられていて、それらがまた神絵師の作品みたいな絵ばかりで見惚れました。

物語の見どころは、やはりまずはオリアナとヴィンスの恋ですが、2人は少なくとも3回は人生を繰り返しています。
2人が揃って過去の記憶を持っているわけではなく、覚えている方が結果を変えようとしていろいろと足掻くので同じイベントでも結末が違ってきます。

はじめはオリアナだけが覚えていて一方通行だったので読んでるこちらも寂しさが増して、次のやり直し人生ではヴィンスだけが覚えていて。

うまくいかない時のオリアナの気持ちや、反発しながら揺れ動くヴィンスの気持ちがみずみずしく、時に体温まで感じるほど生々しく、
なんて生き生きと人間を描けるんだと、作者様すごい!と感嘆しながら目一杯楽しみました。

特に男の子がいい。取り澄ました(ように見える)ヴィンスの中に渦巻く感情の嵐、衝動的なエネルギーなどが本当に魅力的で萌え死にそうでした。

また、脇役キャラ自体も魅力的なうえ、彼らの紡ぐ物語もそれぞれに素敵で、それだけでも一冊の本にできそうです。
私は、オリアナの友人ヤナとアズラクの話が大大大好きでした。
アズラクが普段抑制してるのに本気出したら迫力満点なところとか、萌え死にNo.2です。
1度目と2度目では2人の結末が違うから、ああ良かった〜と安心し、心底嬉しくなりました。
ヴィンスの親友ミゲルも穏やかで優しくて人気あったはず。

そもそも何のためにこんなに人生をやり直しているのか、
最後はその謎も明らかになって、「ああ楽しかった!」とハッピーに終われて、思い残す所なく大満足な気持ちに浸れます。

書籍化進行中とのことで楽しみです。
書影がまだないのは残念。

ところで、ヴィンスはいつもシダーウッドの香りがすることが作中によく出てくるのですが、
この物語から影響を受け、つい気になってしまってウッド系のフレグランスを買いました。

男性的な香りというイメージでしたが、意外にも甘さも感じるし好きな香りになりました。

前に紹介した「背中を預けるには」のグラヴィスも作中で「冬の深い森の香り」がするとあり、それもウッド系の香りだろうと考えたり。
「今夜だけ生きのびたい」のクレーレも革と針葉樹の香りだっただろうか。(ちなみにアーベルはミント。)
ま、単にいい香りが好きなだけなんですが、こういう楽しみ方もいいんじゃないかと。



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