よく「老後が心配だ」という人がいるが、まるがしゃべったらこう言うに違いない。

「自分がいつ死ぬかも分からないのに、何を心配してんだよ」

 天気が良ければ虫を取りに出掛け、雨が降れば家にこもって標本を作る。私は、それで満足である。外で何があっても、最後はそこへ帰ればよい。自足できる時間を持つ人は、強いのである。

 

 

       養老孟司 『まる ありがとう』 より

 

 

 

 

 

養老先生のまるを見るまなざしの、なんと柔らかくて愛しげなこと。

まるに対しては強い信頼、その生き方へのリスペクトまでその目に込められている。

 

 

どちらかというと、難しい顔や、苦笑いの印象が強い養老孟司先生の、意外な一面を見られる貴重な一冊。

やっぱり、猫ってすごい。

 

 

 

日がな一日なにをするでもなく過ごす猫をずっと見ているとたしかに『自足』という言葉が浮かんでくる。

人も、欲とか、向上心とか、そういう「ちょっとでも前へ前へ」というのじゃないところで、ちゃんと『自足』できればいいと思う。

 

退屈そうに見えても、ぜんぜんやる気なさそうに見えても、猫は十分、自分で自分を満たしている。

 

 

 

秘書の平井さんの写真、また控えめでありながらも、愛情深く溶けるような優しい言葉で綴られた文章にも、とても心惹かれた。

 

 

 

まるは娘さんが飼うことを決めて家に連れてきたけれど途中からは娘さんは家を出たので、いちばん多くまるに携わることになった養老先生。

 

 

言葉でたくさんの仕事をされている養老先生が、決して物言わず、むしろ物言わないからより信頼、絆が強くなる猫、まるのことは神秘的な感覚をさえ持たれていたかもしれない。

 

 

 

養老先生はまるの骨と一緒に墓に入られると決めておられるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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