今更ではありますが、10月7日の本会議で我々3名が除名された原因とされる採決の条例案について、私の理解を記します。

 

9月30日、文教委員会で条例案についての質疑がありました。答弁者として答弁するのは大変なことであり、特に議員の提案に対する質疑は、事前に質問案も渡されないまま、緊張感の中、予備知識だけで対応することが求められます。

私は、オンラインで視聴するのみでしたが、この条例案のつくり方や違法の可能性など、技術的なところばかりの質問が多く、肝心の中学校英語スピーキングテストについての質問や疑問が少なかったことを残念に思います。

なぜなら、この中学校英語スピーキングテストを都議会として止めるための数少ない方法のひとつが条例案だったからです。

 

教育委員会は、知事(首長)とは独立していますが、行政委員会のひとつであり、議会のコントロールを免れるわけではありません。だからこそ、予算審議があり、議員の条例制定権があります。

議会が条例案を提出することが違法だというのなら、予算を否決することもできなくなります。

そこまでの聖域であったら、誰が教育委員会をチェックし制御するのでしょう?おかしなことになります。

 

ちなみに、条例制定権は、憲法第94条に定められています。

また、法律に関して言えば、

①地方教育行政の組織及び運営に関する法律第26条第1項は、「教育委員会は、毎年、その権限に属する事務(前条第一項の規定により教育長に委任された事務その他教育長の権限に属する事務の管理及び執行の状況について点検及び評価を行い、その結果に関する報告書を作成し、これを議会に提出するとともに、公表しなければならない。」としている。

②地方自治法第96条第1項は、「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する書類及び計算書を検閲し、教育委員会又は委員の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる。」と規定しています。

 

議員が議決権の行使をすること、また条例を設けまたは改廃することは当然。また、「不当な支配」の基準については、七生養護学校東京高裁判決(平成23年9月16日)を参考にしていただければと思います。

 

 

以下、9月30日の文教委員会での質疑より、疑問とされている違法性について

都民ファーストの会を含む他党からの指摘では、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第21条第4項において教育委員会の権限が「学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること」に帰する。

 

教育委員会の権限に属する事務については、同法第15条の「教育委員会規則の制定等」として、「教育委員会は、法令又は条例に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、教育委員会規則を制定することができる。」と規定し、「法令又は条例に違反しない限りにおいて」となっている。

*教育委員会の規則制定権については、教育委員会には議会に対する条例の提案権がないので、権限に属する事務の実施規定は「規則」という法形式によることは当然。

 

条例案が法に抵触するのか

法令と条例の抵触関係の判断基準を示した最高裁判決(昭和50・09.10)

条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。

①行政に関する法律は、行政の機関の権限、所掌事務、構造などを定める「行政組織法」と、行政機関が国民との関係で法律関係を形成、変更、消滅させるための法、すなわち「行政作用法」の二つに大別される。

②「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」における「長」と「教育委員会」の「職務権限」の規定は、教育行政の独立性の観点から、同法の規定に基づく条例によってのみ例外が認められる趣旨であると考えられる。よって、任意に議会の条例によって「職務権限」を変更することはできないものと考える。

③本条例案は、「権限に基づく事務」、特に「国民の権利義務」に関わる「行政作用法」としての事務の執行について定めるものである。本条例案は行政組織の権限を変更させるものではない。

また、「教育の独立性」に関する法令は、教育基本法第16条第1項に規定されている「不当な支配」に該当するかどうかを基準として判断することになり、本条例が「法令の範囲内かどうか」は、最高裁判決の基準に従って、法令と条例の抵触関係を精査し、判断することになる。

 

東京都教育委員会の施策として、「英語スピーキングテストを都立高校の入試に活用すること」は、法令で規定されていることではなく、東京都という地方公共団体の独自の施策であり、地方自治体独自の判断に委ねているものである。

本条例案は、地方公共団体の独自の施策に対して、地方自治体の議会が判断し、条例で規制するものである。

よって、本条例案は、最高裁判例の「両者が同一の目的に出たものであっても、国の法令が必ずしも全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるとき」に該当し、国の法令と条例の間には何らの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない。

 

また、先のブログでも述べたように、「英語スピーキングテストの都立高校入試への活用」は、違憲・違法であり、違憲・違法な事務執行は、法令の保護するところではない。

 

(見解の全文は、先日公表した都民ファーストの会からの除名通知に対する弁明書にあります。)