砂川事件の最高裁判決は、1959年。集団的自衛権容認をめぐる議論でたびたび取り上げられています。安倍内閣の憲法解釈変更の1つの根拠とされ、集団的自衛権に触れている判決です。


砂川事件とは、「砂川闘争」で東京・米軍立川基地(1970年代に日本に返還)の砂川町(現・立川市)などへの拡張に反対する反対派の学生等7人が基地内に立ち入ったとして日米安全保障条約に基づく刑事特別法違反(施設または区域を侵す罪)で裁判にかけられたものです。被告人は根拠法すなわち安保条約やそれに基づく米軍の駐留が憲法に違反しているから無罪と主張。東京地裁は憲法9条に駐留米軍は違反するとして全員無罪の判決を出しました(「伊達判決」)。


その後、検察の上告により、195912月に出された最高裁判決が「砂川判決」です。「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである」と自衛の措置をとりうることを認め、「安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、憲法第九条、第九八条第二項および前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない」としています。

(地裁判決は破棄差し戻しとなり、有罪(罰金2000円)で上告棄却された1963年に確定。)

全文: http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/816/055816_hanrei.pdf


201564日の衆議院憲法審査会では、与党推薦の憲法学者も含めて3人の参考人全員が集団的自衛権の行使などを盛り込んだ関連法案を憲法違反と指摘しました。これに対し、2015610日、安全保障関連法案を審議する衆議院特別委員会で横畠裕介内閣法制局長官は砂川事件の最高裁判決を引いて「これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性は保たれている」と説明したのです。


「主権国として有する固有の自衛権」として国連憲章(51条)の集団的自衛権にも触れていますが、判決では安保条約による米軍駐留や個別的自衛権が違憲でないことを主として示しています。判決文には主文と傍論があり、後者には裁判官の結論に至った意見などが盛り込まれます。これをもって、憲法解釈の変更とするのは、やはり無理があるのではないかと考える次第です。