【つなぐ人たちの豊かさ】
7歳の冬に北海道のどこかで出逢った
アイヌのおばあちゃんは、こう言ってた。
『持たない方が 豊かなんだよ』
実際には言葉がよくわからなかったのに
言いたいことはハッキリと伝わった。
髪の毛を撫でてくれた皺くちゃの手は、
何もないところから
どっしりと落ち着いたあたたかさを
絶え間なく生み出していて 、
優しい魔法使いみたいだった。
そのおばあちゃんとは、時を経て再び繋がり、
今、わたしの大切なライフワークを
手伝って下さっている。
『人が神と共にこの地で生きるということは
必ず一方通行ではない。
すべてのことがすでにお互いさまにある。
放つものは迎えるものがあってこそ。
与えるものは受け取るものがあってこそ。
得るものは捧げるものがあってこそ。
生まれ来るものは死にゆくものがあってこそ。
すでにあなたがその命を生きるようにと
神々から与えられているものに
出会い、喜び、悲しみ、許して
受け取り還してゆくだけのこと。
持たないほうが、豊かなんだよ。
その全ては、お互いさまにそこにある。』
アイヌのおばあちゃんの教えは、いまも
ときに深い祈りとなって、大地に響く。
わたしが祈りの聖地などで場をおつなぎするとき
必ずその土地にゆかりの深い
大切なご縁の方を頼る。
北海道のアイヌのおばあちゃんも
沖縄の拝みをされるナギさまも、
「人と分かち合う」ことで発揮される
個性の豊かさを、祈りながら生きる人を、
ずっと応援してくれる人たちだ。
わたしはこれを、大切なご縁のある方々と
分かち合いたくて書いている。
長い間、「わたしは間違っている？」
とか「独りよがりの思い込み？」とか
いろんな臆病な気持ちが襲ってきて
"伝えること"が怖かったけれど
背中を押してくれる人のおかげで
これもまた、おばあちゃんの教えの通り、
わたしの命を通して起こりゆくことは
きっと一方通行ではないのだと、思った。
誰かが、誰かを通してでも、何かしら
この発信に呼応して分かち合ってくれるなら
嬉しいと思った。
「持たないほうが豊かなんだよ」
もっとわかち合う豊かさに安心しても
いいんだよ、と言われてる気がした。
おばあちゃんもきっと、
木彫りのような深い皺を一層くしゃっと寄せて
笑ってくれるに違いない。
この、祈りをつなぐ人たちのおかげで、
曇りなく伝えられることがある。
たくさんの人の祈りが、その土地で
のびのびと正直に育まれていくようにと、
ご縁のある人を通して助けてくれる。
なんの智慧もないわたしは、ただただ
魂ってチームなんだなぁ、と
つくづく感心してしまう。
だから、素直にありがとうと思えるし
おばあちゃんにも甘えて教えてもらうだけだ。
何もかも持たなくても、つながる気持ちだけで
その智慧も愛も護りも
分かち合ってもらえるから。
亡くなっている「過去」の人の意識が
「今」に 「ここ」に同時に感じることが、
なにも、怖くない。不思議じゃない感覚。
ただ嬉しいとき、ひとは過去も未来も消える。
沖縄の、大好きな なぎさまのことも
いつか、少し書いてみたいな。
ちょっと厳しいけど愛情あふれる方だ。
いろんな祈りつなぐ人たちの想いが
今生きている私たちの想いと重なって、
無邪気に笑い合える生き方ができたら
お互いさまに一番嬉しいことだと思う。
松本育子
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