9-- 「第2の人生」 1822字 サンフランシスコ日米タイムス掲載
不景気な世の中、リストラに怯えながら頑張ってきた人もおるでしょう。
私は大工でしたから、注文取りに苦労しました。
注文があった日は喜んでビールを飲み、なかった日は注文があるようにと願いながら、ビールを水代わりにして胃腸薬を飲みながら頑張ってきました。
フリムン徳さんは大工ではないのか、ビール会社で働いているのか。
自営業者に不景気はしんどい。
明日注文があるやろうかと、毎日が不安でした。
お客さんの為、家族のため頑張ってきましたが、えらい世の中になりました。
お客さんも会社も子供も当てになりません。
でももう、何も心配する事はなくなりました。
病気で仕事を引退しました。
還暦になりました。
還暦とは生まれ変わる事です。
オシメをしてもかまわないのです。
世の中どうにかなるのです。
頭の中で心配するのは無駄な事です。
どうにかなるこの世の中、好きなものを食べて、好きなものを飲んで、好きなことをやるべきです。
酒を飲んで、焼酎を飲んで、ビールを飲んで、酔って、歌って、踊って、暴れたらいいのです。
還暦なのです。
いつのまにか還暦の歳になっ
た、いつの間にかです、いつの間にかです。
これからは余分な人生です。
生まれ変わる時です。
第2の人生が始まるのです。
子育ての心配もイラン、会社を首になる心配もイラン、上役のご機嫌を取る心配もイラン、部下に陰口を叩かれる心配もイラン、周囲に気を使ってびくびく生きる必要もイラン。
イライラだらけとは違います。
やっとイランだらけになったのです。
こんな気楽な人生はないです。
でも一つだけイルのがあります。
これは死ぬまでイリます。
それはヨメハンです。
そのヨメハンと楽しく過すことです。
それにはええ方法があります。
私はそのコツを長年の心理学の勉強と、お客相手の商売で習いました。
でもすぐにはできません。
なれるまで稽古しなければなりません。
柔道、空手の稽古と一緒です。
稽古が要ります。
少しの辛抱でできます。
一つ、それは親身になって、ヨメハンの話を聞いてあげることです。
前に何回か聞いた同じ話でも、「もう、その話は聞いた」は禁物です。
「アッそう、そうかいな、ほいで」と相槌をうちながら聞いてあげることです。
二つ目は誉めてやることです。
小さなことでも、口に出して誉めてやることです。
自分のヨメハンを褒めるのは恥ずかしい時もあります。
褒めにくい時は焼酎の力を借りるのです。
焼酎の酔いが助けてくれます。
ほめるのです。
褒め殺しではありません。
褒め倒しです。
第2の人生を楽しく生きるには優しいヨメハンと共に生きることです。
歩く時はアメリカ人のように手をつないであることです。
もう周囲を気にする歳ではありません。
握り合った手からお互いの愛情が交流して気持ちがいいです。
これは効果があります。
手を握り合って歩く白人達に負けてはなりません。
最後に一つ、毎日できる趣味をみつけることです。
私は2年前、高血圧と関節炎、痛風で倒れて、生きる夢をなくしかけましたが、ベッドで這って書いたエッセーが日米タイムスに入賞したのがきっかけで、エッセーを書く趣味を見つけ、今年はアメリカの日本語新聞、日本の新聞に13回以上も入賞、掲載されました。
こんな事を書いたら、ええ格好しいの人間に思われますが、ええ格好したいのです、ええ格好しいの私は。
お許しくだされ。
1年間で書き上げた75篇のエッセーがついに文芸社から本となって日本全国の本屋に出ました。
アメリカの日本書店にも出ました。
人間病気になっても、自分に出来ることを捜して、自分の置かれた立場で、深く深く考えながら、頑張ったら、芽が出る、周りが助けてくれる、祈ったらウヤフジ〈ご先祖様〉が助けてくれる。
世の中どうにかなる。
くよくよしなはんな。
病気がなんじゃい、歳がなんじゃい、リストラがなんじゃい、失敗がなんじゃい、もう一度やったらええねん、頑張れば出来る。
諦めたらアカン。
趣味は毎日を楽しくさせてくれます。
生き生きさせてくれます。
ろくなことを考える暇がなくなります。
夢が持てます。
諦めないでみつけることです。
老後の人生を諦めたら、アカンのです。
フリムン徳さん