3-- 「社長交代」 | ikoma-gun(フリムン徳さん)のブログ

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3-- 「社長交代」 1986字  7-2006

 

 腹が立ちますけど、立てられまへん。

相手が強いから。

泣きとうなりますけど、泣けまへん。男だから。

悔しいけど、どないにもできまへん。身体がいうことを利きまへんから。

 

フリムン徳さんは26年間、ロサンジェルスやシアトルで主に、障子、茶室の大工をしていたのですが、身体を壊して、大工仕事が出来ない身体になった。

痛風、高血圧、関節炎になったのです。

バッドワイザーを飲みすぎましたんです。

「ワイはバッドワイザーのアドバイザーや」と語呂合わせのいい言葉を言いながら、毎晩26年間、バッドワイザーを浴びるほど飲み続けた。

仕事がうまくいったらビールで祝杯、うまくいかなくてもビールで憂さ晴らし、疲れたらビールで疲労回復、何か面白くないとビール様。

「胃が食べ物を食べるのではない、仕事が食べ物を食べる」と誰かが言っていたのを思い出すと、次は「ビールは胃が飲むのではない、その時の気分が飲む」と自分で作った名文句を心に言い聞かせながら飲んだ。

 

その酒の肴がまた悪かった。「しめ鯖でんね」。

このしめ鯖を肴にしての、バッドワイザーでの晩酌は疲労回復の薬リポビタンどころか、世の中で一番よく効く疲労回復の薬でした。

「ビール、鯖、ビーフは痛風の元、酒は糖尿病の元」。

痛風で入院させられて、医者の言った言葉は当たっていました。

医者はよう知っている。

親友、志保やレストランの大将は、料理の仕方で、「マグロよりもハマチよりも旨いのは「鯖や」と言っていた。私はアノ言葉に惚れていました。でも倒れてから3年、鯖は辛抱していましたが、この頃、ひと月かふた月に一回、また満腹食べる。

知り合いの井手尾さんがロスアンジェルスから作って持ってきてくれる焼き鯖寿司が旨い。

人に分けて食べさすのが惜しいほど美味い。

人生短い、好きなものを食べずに暮らすのは惜しいと思いながら、また鯖を食べる。

 

フリムン徳さんの痛風、関節炎は膝が痛くて、曲がらん。

これはアメリカ政府認定の医者が、膝に大きな差し金を当てて、膝の曲がる角度を検査して、身体障害者と認定してくれた、いや認定された。正座も出来ない。

おまけに、力が出なくて重たいのが持てん。

 今は嫁はんの方がはるかに私より力が強い。

歩くのも早い。

重たいものを運ぶのは一人では出来なくなった。

嫁はんの力が必要なのです。

大工でしたから、家の建て方も重たいものの運び方もよく知っています。

でも頭で知っているだけではだめなのです。

力がないとだめだとよくわかりました。

嫁はんと一緒に、ベッドの大きなマットレスを運ぶ時なんかは大変です。

フリムン徳さんは歩くのが遅いから、嫁はんが先を持ち、私は後を持って運ぶのですが、それが大変なのです。

嫁はんに引っ張られて、マットレスを落としそうになるのです。

だから、歯を食いしばって、足元に力を入れます。

そうすると歩くのがよけい遅くなるのです。

「どうしてもっと、ゆっくり歩いてくれまへんのやろうか」と思っていると、「どうしてもっと早く歩けんの」と大きな声で怒鳴るのです。

いつの日かどこかで聞いた言葉です。

いつかフリムン徳さんが元気な時に、嫁はんや子どもに使っていた言葉です。怖いです怖いです。

どうしてもっと、優しい言葉で言ってくれまへんのやろうか。

今までとまったく逆の立場になりました。

怒鳴る大きな声は人間の心をまずくします。

子供は親の言葉を真似るといいます。

嫁はんは旦那の言葉を真似るようです。

あまり重たいので、落としそうで、我慢できないので、「一度下ろして、休ましてくれ」、と言うと、しぶしぶ休ませてくれます。

休みながら、「どうしてこんなに小さい嫁はんにこんな力があるのか」と不思議に思います。

嫁はんの顔を見ると勝ち誇ったような顔をしています。

社長さんみたいな顔をしています。

そうですフリムン徳さん夫婦は社長交代をしたのです。

見掛けは元気で大きくても、もうフリムン徳さんは人形男みたいなものです。

身体が大きくても、力がなければ、力のある嫁はんに従うべきです。

力のある働いて収入のある嫁はんに仕えるのみです。

ここで私も年金をもらって稼いでいると言うと、もうお終いのような気がするから言いまへん。

だから自分の年金のことは禁句です。

そして文句を言わずに従うのです。

これが家庭平和の根本です。

世界平和の一部やと思っています。

自分の意見が入れられない時は嘘も言いますが、その嘘も見抜いているようです。

社長は従業員の嘘を見抜かないではだめです。

それから、なるべく負けるようにします。

勝つと思っても負けるようにします。

社長さんには勝たせないとだめです。

そして社長さんは勝たないとだめです。

でもフリムン徳さんは「負けるが勝ち」という言葉を知っています。

人間心理では「負ける方に味方する人が多い」という統計の結果もでているようです。に味方する人が多い」という統計の結果もでているようです。