(嫁ハンと親友のバブ)モンタナのティーナの庭の大木で
「オレンジ色の侵入者達」 フリムン徳さん
「あれはいったい、何の行列や」と思わず声が出そうになった。
1キロ先のハイウェーからオレンジ色の服とヘルメットで身を固めた1団の行列がこっちへ向かって歩いてくる。
私の土地の脇を通る未舗装の一本道だ。
新緑の出揃った牧草地帯の中にオレンジ色の行列はくっきりと浮ぶ。2月17日の朝のことだ。山の砂漠といわれ
るこの辺では、雨期に入る11月から牧草や雑草の芽が出る。
1月、2月の氷が張る寒さにも負けないで
一雨一雨ごとに青々と伸びる。
先頭は黄色のヘルメットと黄色の服装で身を固めた男だ。
消防士のようだ。
その後に続く15人も同じ服装だが色はオレンジ色だ。
そのオレンジ色の珍しい行列は私の土地の入口から、それに続く急な坂道を腰をかがめて登り始める。
間もなく、私の立っている庭に現れた。
何のために、うちへこんな大勢の消防士が来たのだろう。
庭に立っている私に目が合うと「ハイ、ドゥーイン」と声をかけて、
庭のベンチにそれぞれ腰掛けた。
ベ
ンチに座れない人は立ったままだ。
急な坂を登ってきて喉が乾いたのだろう。
一斉に腰に下げたプラスチックのボトルの水を飲み出した。
このオレンジの行列に圧倒されて、私は自分の家なのに少し気持が小さくなって、彼らを観察するしかなかった。
人の黒人、1人のヒスパニック系、あとは全部白人だ。
20歳前後の若い厳しい面の
人達だ。そしてそろって男前だ。
間もなく、機械を引っぱった消防車が庭に来た。
機械は消防車からはずされて庭の中ほどに置かれた。
なんと、消防車のドライバーは顔見知りのトニーだった。
これでわかった。前々から、彼は、私の家の周りの木を切ってあげると言っていた。
まさかこんなに大勢で来るとは思わなかった。
夏の山火事に備えて、家の周りの雑木林をを20フィート(6メートル)の幅で、消防署がトレーニングも兼ねてただで伐採してくれるのだ。「ほんまに、ただでやってくれるのか」とトニーに念を押すと、
そうだと言う。アメリカはありがたい。続く