③けれども、あんたは村八分によく耐えて、よく辛抱して、
自分を反省して、子供ながら、「どうしたら、
人に好かれるか、どうしたら友達が出来るか」を
勉強して、よその村に友達ができた。
それがきっかけで、大人になっても人に好かれる
心理学を猛烈に勉強し、実行するために、
とうとう仕事も数え切れないぐらい変わり、
沢山のお客さん相手で人に好かれるコツをマスターしたと思う。
そうして、苦労して形成された人柄が人に
好かれるようになったと思う。
それから、あんたはもうひとつ感謝せんならんことがある。
それは死んだお父さんにだ。
私はあんたを産んだが、お父さんはあんたに
徳市という立派な名前をつけてくれた。
名は体を表す。そのとおりだった。
その名前のとおり、「徳」を呼ぶ「市」になった。
金は残さなかったが名を残した。
本はあんたが死んでからも読み継がれるから。
自分の思いどおり世界をまたにかけてやりたいことを
して生きた長男のあんたを私は誇りに思う。
もう私もやがて89歳、あと数年の命と思う。
だからここに私の思いを遺言として書いておきたい。
くれぐれも妹弟 ハナサ、ハバサ、仲良く助け合って生きて下さい。
では先に天国へ行って待っている。
あんたは、もっと長生きして、人を喜ばして、車じゃなく、歩いて、ゆっくり、天国へ来たええ。 母より。