349-癒やしの旅 | ikoma-gun(フリムン徳さん)のブログ

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98  「癒やしの旅」 

 無性に、森の中にあるようなタコマに行きたくなったのは、

半年前からである。

タコマはシアトルの南にある日本人仏教会もある町である。

昔、タコマの港から材木を日本へ輸出していたという港がある。

10年以上も前に5年ほど住んでいたタコマが

見たくてしょうがなかった。

今まで、大阪、パラグアイ、ロスアンジェルスと住んできたが、

何故か、時々、もう1度行きたいと頭の中に

風景が浮かぶのはシアトル、タコマである。

私達の住んでいた山の中のグラハムの隣町である。

毎日森の中で癒しが出来る所である。

森の中にポツリポツリと家がある。

目に付くのはどこまでも真っ直ぐに天に
向かって伸びている高い、太い木、木、木である。



 往復の切符代と小遣い金が貯まったので、

タコマの古い知り合いのケイさんと、

シノブさんに「タコマへ行きたい」と電話をしたら、

嫁はんと二人の往復の飛行機の切符をすぐに送ってきた。

私達は、どうしてこうも親切な人に巡り会える

運命だろうかと喜んだ。

喜界島のウヤフジのおかげです。

今、親切にされた彼らを思い出す時

は頭が

上下に動いているような気がする。

顔を一度上に上げて、見上げるようにする。

それから、お辞儀をする時の様に頭をたれている。

今まで気づかなかったことである。

お辞儀をしながら、電話をしている人のことを思い出す。



 カリフォニア・サンノゼからシアトルまで、

アラスカ・エヤーラインで1時間40分の飛行だった。

飛行機の上から見る緑の森と湖の町シアトルは

10年前とそっくりだった。

シアトル空港にはシノブさんとケイさんが

迎えに来てくれていた。

シノブさんの運転する車の中から目の前を

流れる木と緑の色が、目に食い込んできた。

私達の住んでいる、山の砂漠と呼ばれるブラッドレーの

枯れた灰色の世界とまったく別の世界。

タコマの町の緑の色は、緑にみずみずしさがある。

豊富な雨量のせいだろう。

心の中にまでも食い込んでくる鮮やかな緑だ。

本で読んだ、「森の中へ森林浴に行って、心が癒やされる」

あの言葉がぴったりである。



このタコマの森の中を車で走るんじゃなくて、

ゆっくりと、オナゴはんと手をつないで、歩いてみたい。

それも、若くて、別嬪のおなごはん。

この際、還暦を過ぎたオヤジに、贅沢を言わせてもらおう。

オナゴはんに赤いズボンに白いシャツを着てもらう、

私は、赤いシャツに白いズボン、赤白の組み合わせの恋人達、

ウキウキ気分、エエやないですか。

緑の背景に赤色と白色はよく映えるとわかっている。

毎年3月から4月の終わり頃まで、

私の家の近くの大きな牧場がゴルフ場のような緑になる。

緑の中に赤い屋根、白い壁の1軒の家が

絵のようにくっきりと浮かんで、絵葉書のように見える。

何度も写真に撮ろうと思うがまだ写真にとってない。

でも気になることがあんねん。

赤白で身を固めた足の悪い私の猿みたいな歩き方が、

この鮮やかに緑の中でどう映るか心配やねん。

「徳さんやのうて、エテ公やでー」。

 

以前、私が住んでいた南米パラグアイの

ジャングルは濃い緑だった。

今住んでいるカリフォニア・ブラッドレーの緑は

くすんだ緑である。タコマの木々は鮮やかな緑である。

タコマの木は形も違う。

ブラッドレーの暑い砂漠の木は空にまっすぐ伸びないで、

横に大きくなって、丸い形を作る。

暑い光線から、自分を守るために、枝が曲がりくねって、

こうもり傘の形になっている。

以前、家の周りのオーク(ケヤキ)の木を見て、

どうしてこうも枝がまがって生えるのだろうかと、

いろいろ考えたが、答えは出なかった。

タコマの針葉樹林はクリスマストゥリーのように

空に向かってまっすぐ伸びている。

クリスマストゥリーはこの木の小さいのを切った木である。

タコマの木はバスケットボールの選手であり、

こうもり傘のように丸く横に伸びるブラッドレーの木は

日本のお相撲さんのような感じだ。



タコマの木は針葉樹。

よく写真で見るカナダの湖のバックに広がる

樹木のようにまっすぐに、すっきりと、

空高く伸びているから、すっきり感じる。

 

この針葉樹林のほとんどが、家を建てる

あのトゥーバイフォーになるダグラスファーという木である。

四角く製材されて材木屋に並んでいるあのトゥーバイフォーが、

空まで届くように真っ直ぐに伸びている

このダグラスファーなのだ。私が26年間も大工で、

切って、叩いて、釘を打って家を建てたのがこの木なのだ。

26年間も私の相棒だった木なのだ。

だから私には他の人よりも鮮やかに見えるのだ、

いや、鮮やかに見せてくれているのだ。

「おおきに、ありがとうよ」と、感謝したい。


 
でも私は、あんたに少し恨みもある。

26年間、毎日重たいあんたを切ったり

叩いていたりしたら、疲れた。
だから、私は1日の疲れを取るために、26年間、

毎日バッドワイザーを浴びるように飲み続けた。

その結果は。痛風、高血圧で、とうとう、倒れて、

大工仕事ができんようになってしもうた。

その私を、あんたの鮮やかな緑で癒してくれるというのは、

「木の情け」でっか、「武士の情け」でっか。

あんたはなんと優しい心の持ち主でしょう。

だから、あんたは100年も1000年も長生きするのですね。

2006年