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私は親父の父、つまり私のおじいさんは知らないが、
生前、彼も片足が悪くてビッコを引いていたという。
やはり前世の何かの因縁だろうか。
それにしても私は人間様だけでなく
、私がパラグアイで飼った豚までもが、
後ろ足の右か左がビッコだった。
その豚から、生まれた5匹の子豚の何匹かもやはり
後ろ足の右か左がビッコだった。
私は今までの私の足にまつわる話をこの手で
究明したくなった。
豚たちを殺して肉にして売る前に、
豚のビッコの足を、外科医のように包丁で手術して、
詳しく、調べてみた。
そしたら、どのビッコの豚の足も、同じ所の小さな
針ほどの神経が黒くなって固まっていた。
どうして、私の飼った親豚も子豚も、親父も、私も、
おじいさんも、足にまつわる病気が多いのでしょうか、
これを前世の因縁というものでしょうか。
これを自然の摂理というのでしょうか。
昔の喜界島の年寄りたちはよく言っていた。
「悪いことをするな、ええことをせよ、お天道様が、
雨だれに隠れて見ている」
小さい頃、親父からよく聞かされていた話を思い出した。
「種子島鉄砲ができた頃、よその村から侵入者があったら、
鉄砲を持って、追っ払っていたらしい。
うちの祖先はその侵入者を射殺したら、
かわいそうやと思い、足をめがけて、
鉄砲を放ったそうである」
でも、わからない、足をめがけて鉄砲を打ったが、
鉄砲の引き金を引いたのは手である。
私は足にまつわる病気が多かったが、
足は私を、物書きの端くれではあるが 、
作家と呼ばせるようにしてくれた。
足の病気のお陰で大工仕事が出来なり、
文章の書き方を始めさせた。
「フリムン徳さんの波瀾万丈記」という本まで出版できた。
足のお陰と思っている。
自然の神様は陰と陽を巧みに使って、
自然界を調節しているようである。
終わり