『ためになる健康情報』 第50回 傾く

北本中央クリニック 神経内科 藤本健一

 

パーキンソン病では腰を曲げ、膝を曲げ、肘を曲げた前屈姿勢が有名です。

前屈に加えて、左右どちらかに傾くことも多く、ピサの斜塔になぞらえて、ピサ症候群と呼ばれます。

 

パーキンソン病は左右どちらか片側から発症し、罹病期間が長くなっても左右差が維持されるのが特徴です。

発症側に傾くことが多いですが、反対側に傾くこともあります。なかには日によって傾く方向が変わる患者さんも居ます。

前屈になるのは背骨の両脇にある傍脊柱筋の衰えが原因です。この筋肉の緊張に左右差があると側屈になります。

 

健常人は左右に傾くと風景が傾くので違和感を覚え、姿勢を正します。

パーキンソン病では傾いても違和感を覚えないという報告があります。

このために戻すことが出来ない角度まで傾いて、椅子から転げ落ちることになります。

 

傾きを感じないのは立位や座位のときだけではありません。ベッドに休んでも真っすぐにならず、斜めに寝ころびます。

これは斜め徴候と呼ばれます。

身体が動かず体位を変換することが出来ないためもありますが、患者さんが真っすぐでないことに違和感を覚えないことも原因です。