『ためになる健康情報』 第46回 ムクナ豆

北本中央クリニック 神経内科 藤本健一

 

パーキンソン病の原因は脳内のドパミン不足です。ドパミンは消化管で吸収されないため、前駆体のレボドパが使われます。

 

レボドパはアミノ酸なので上部小腸だけで吸収され、血液で脳に運ばれ脳内のドパ脱炭酸酵素でドパミンに変換されます。

 

ドパ脱炭酸酵素は胃にも存在し、通過するレボドパをドパミンに変換するので、レボドパ単剤の脳内到達率は1%すぎません。

 

ムクナ豆(八升豆)はインド原産のつる性植物で、3~4%のレボドパを含有します。

 

パーキンソン病治療への応用も試みられますが、水に浸けたり煮たりすると7~8割が失われます。

 

現在使われるレボドパ製剤は、胃のドパ脱炭酸酵素を阻害する薬との合剤(レボドパ合剤)で、脳内到達率を増やす工夫がされています。

 

ムクナ豆はドパ脱炭酸酵素阻害薬を含まず、多くが胃で分解されるので吸収率は低く、料理法により含有率が変わるので不安定です。

 

レボドパ以外の有害成分が含まれる可能性も否定できません。

 

正確な用量のレボドパを安全に脳内へ供給するには、化学合成された純度の高いレボドパ合剤の方が、ムクナ豆よりも安価で確実です。