「宇内」という言葉があります。ウダイと読むそうです。手元の漢和辞典で調べてみると「天下。世界。天地の間」を意味するという。日常ではまず耳にしない言葉だと思います。

江戸遷都論についての文章を読んでみると、賀茂真淵、佐藤信淵、高橋作也、伊地知正治らの名前が、その源流としてあげられています。中でも佐藤信淵の『混同秘策』(『宇内混同秘策』とも)を“名著”だとしている著者もいます。

じっさい、この『混同秘策』を読んでみると、遷都について直接触れているのは、最初のごく一部分であることが分かります。“名著”と言われる所以は別のところにありそうです。ここでは記しませんが、それは“混同”の意味するところだと思われます。

私は「東京奠都」に興味があって、この『混同秘策』を読んでみたのですが、遷都に関しては、のちの前島密ほどの具体性、説得力はないようですが、その先駆けとしては評価されていいと思います。

埼玉県の毛呂駅に近い出雲伊波比神社にて。「宇内静謐」とある。

明治21年に出版されたもの