以前、「薩摩義士」に興味を抱いたことがあった。その際、「輪中」(わじゅう)というものがあることを知った。輪中とは、洪水から住居や田畑などを守るための堤防や、その区域内を指すものらしい。

最近、輪中を維持管理するための規則というか、様々な規約のあることを知った。

いま、読んでいるのは明治時代のもの。たとえば、「中之江東輪中水防規則」(明治28年7月25日決議)を見てみると、次のようなものがある。

第八條
臨時急破等出塲ノ人夫ニ酒飯ヲ與ヘ或ハ抜群出精ノ者ニハ賞與スルコトアルベシ

第九條
水防ノタメ負傷或ハ死ニ至ル者ハ扶助料又ハ吊祭料ヲ支給ス

「今村輪中水防規則」には下記のものがある。


第八條

出水ノ節人夫ヲ繰出シタル後ハ各社寺ノ鐘鼓ヲ停止シ若シ堤防潰裂シタルトキハ近傍ノ寺院ヨリ漸次早鐘ヲ連撞シテ水下町村へ急報アランコトヲ町村ヨリ豫テ社寺へ商議シ置キ其際實施セシムベシ⋯


「福束輪中水防規則」には次の記述があった。


 第14條

水防組員ハ渾テ辯當持參スル乎又ハ一村毎ニ取纏メ後ヨリ現塲へ送付スベシ。但非常ノ際ハ出塲役員協議ノ上酒飯ヲ與フルコトヲ得


「非常ノ際」ということになっているけど、時と場合により、お酒も提供されたことが伺える。一見すると緩やかに思えるものの、次の16條は罰則となっている。 


 第16條

組員ニ於テ役員ノ指揮ニ背キ又惰慢者ハ役員恊議ノ上直チニ除名又ハ相當ノ所分スルコトアルベシ


この條文は、條文の流れからすると、「非常ノ際」、もしくは「出水ノ際」に指揮に背いた者に対して厳罰が課されるもの。


近年、水害が頻発していることもあり、興味深く読んでいるところだ。