佐治川石 | 水石 一刻亮のちょっとしたコダワリ

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水石の深淵なる美を見つめて

4月になりましたね、

今年は陽気が変で、ソメイヨシノからヤエザクラ、藤の花まで一斉に咲き乱れていますねぇ

 

さて、今回は佐治川石を飾ってみます。

台座石で広寿台が付いています。

 

少し飾りの基本を解説したいと思います。

主石は右勝手と判断しました。

右勝手、つまり右側の力の作用が強く、左方向に流れていきます。

したがって、左側に余白を設けるのです。

 

ココで注意点、水盤飾りでも台座石でも、

卓に載せる位置は真ん中です。台座石を卓上で勝手側に寄せる事はありません。

あくまで余白は卓と一体で考えて下さい。

おおよそ床の間の三等分した位置の勝手側に寄せて飾るのです。

 

(水盤飾りでは、水盤上で石を勝手側に寄せて据え付けるのですが

水盤そのものは卓の真ん中に飾ります。)

 

 

次に見栄えですが、

この卓ですと天板下の余白が多過ぎます。

つまり眺める位置(目線)が高すぎますね。

 

左右の間口も石に対して少し窮屈なように感じます。

 

この様に天板が一段下がった造りの卓が多いと思いますが、四方を縁取られている状態なので

いっそう窮屈なイメージを受けるのです。

肩のデザインも角張った造りで、円やかさは余り感じられません。

 

 

 

卓を変えてみました。

薄手の達磨卓です。

 

目線は少し見下ろす感じになります。

私はこちらの飾りの方がずっと映えると思います。

 

天板は面一で、逆に縁が一段下がっています。

肩も丸みが有り、優しい感じの卓ですね。

以前掲載したときはカリン材と書きましたが、黒檀かも知れません。

 

主石は岩上に建つ寺院か宮殿、或いは古代人が住みついた岩屋とでも観ましょうか。

 

 

佐治川石と言う事で鈴木広寿さんから購入しましたが、

果たしてこの様に鉄さびが載る石質が有るのでしょうか???

佐治川石も鉄分を含んだモノが有るのですかねぇ

 

それ程古い石では無いと思われますが、鉄サビのおかげて

随分と時代の載った石に見えます。

時代感や持ち込みが効いた石と言うのは、見ていて飽きの来ないものです。

 

 

掛物は『藤花小禽図』

岩山に絡みついた藤蔓と花房

 

紙本で渋い味わいの有るの作品です。

藤の葉は金泥で、花は鮮やかなブルーです。

 

スズメが果たして岩山に居るかというと、ちょっと不似合いですが・・・

 

卓の合わせにしても、掛物の選択にしても、

如何にして理想の飾りに近付けるか、

如何にして水石を引き立たせ、飾り映えを美しく見せるか、

そこが水石家の腕の見せ所・・・なんでしょうかね、

 

作者は愛石家としても知られる山元春挙先生です。